T-forum紙上初の男性の参加です。
子育てを楽しみながら仕事や地域に、そして自分自身のために頑張っていらっしゃる方々の元気の出るお話です。この対談はメールを駆使した、仮想対談として炭谷晃男さんが企画して下さいました。
出演者
井上智博さん(会員・多摩市唐木田)
土生恵子さん(八王子市別所)
司会
炭谷晃男さん(会員・八王子市別所)
(炭谷)私たちのまち多摩ニュータウンは子育てのまちとも言えます。女性の結婚年齢ですが、全国平均が25.2才、東京都では若干あがって27.6才ですが、多摩ニュータウンでは25才と低くなっている。サラリーマン世帯が多くを占めて、その過半数が23区内に通勤し、平均世帯人員3.6人で、7割が核家族というのが多摩ニュータウンの家族です。
そのような中で、最近男性の側も少しずつながら子育てについての意識は変わりつつあるように思います。男性も、子供のおしめを替えたり、まちを歩いていても子供をだっこしている男性の姿は実に多くなりました。井上さんも、多摩ニュータウン学会の集まりにお子さんをだっこされて参加されていたりして、その井上さんの姿がとても自然に感じられました。
(井上)3才、9才のパパです。
先日も、厚生省のポスターのことが話題になりましたね。私も決して偉そうなことは言えないのですけど、(いつも、連れ合いに怒られていますから)、子どもとの関わりって、1つの楽しみですよ。特に小さいうちは、毎日、いろんな成長が見えて、一生懸命たどたどしくお話をしてくれたり、お歌を歌ってくれたり、いろいろ予期せぬことをしてくれて、見ているだけで、心がなごんで、ストレスを解消できます。
ところで、世の中のお父さんは、そんなに働いてばかりいるのですか?ぜひ、職場に厚生省のポスターを貼ってもらわないとね。
(炭谷)私自身は、家事も子育てもろくすっぽ分担をしていませんが、井上さんは子育てや地域との関わり、関心を持たれたのは何かきっかけがあったのですか?
(井上)自分の場合は、6年前に多摩市に引っ越して来ましたが、その翌年に、知り合いに、保育園の父母会役員にさせられたのが、始まりのような気がします。
どんどんエスカレートして、ずいぶん人間が変わってしまいました。子どもが小学校にあがるときなんかは、これでまた、子どもを通して地域に接する機会が増えると、嬉しくて仕方がなかったんですから。あまりエスカレートして、妻にはあきれられてしまっていますが。
(炭谷)次に、女性の側の意見をうかがいましょう。現在、三人のお子さんの子育てをしながら、在宅ワークと家庭との両立に現在進行形で頑張っておられる土生さんにご意見をいただけますか。
(土生)10才、8才、6才のママです。
私は、最初の出産を機に外での仕事はやめたのですが、子どもが生後2ヶ月半頃から、細々ながらも、自宅でできる仕事を再開しました。在宅ワークとして、いろんな仕事をしてきましたが、現在は主に、育児や食生活に関するライター・編集や育児誌の相談室のレターカウンセラーの仕事をしています。子どもの成長に合わせて、少しずつ仕事の幅を広げていったのですが、夫はとても理解があり協力的でした。外資系の会社ということもあり、育休も取りやすく、どうしても子連れでは行けない取材や編集会議の時などに、会社を休んでくれたこともあります。在宅ワークですから、どうしても、子どもが寝たあとやご機嫌で遊んでいる時にしか机に向かえないわけですが、そんな時、子どもの世話や遊び相手になってくれました。 彼、ご飯をつくるのもうまいんですよ。凝り性なので、家事をやらせたら私より上手で、「主夫」の才能もあるかも。でも、それが、三人目の入園を機に、急激に私の仕事が増えていったのと、幼稚園のPTA会長を私が引き受けたあたりから、夫の様子が変わっていきました。
(炭谷)どんなふうに変わっていかれたんですか?
(土生)ちょうど、夫も会社で中間管理職として心身共に大変な時期でもあり、まず、育休どころか有休も取れない状態になっていきました。帰りも遅く、子ども達が寝たあとの帰宅です。そんな中、私が仕事だPTAだ、ということで、パタパタ始めたことで、夫との会話も少なくなりがちだったんですね。よく、「在宅ワークは、子育てとの両立ができていいね」と言われるんですが、実は、外で働くのよりもしんどい部分があるんですよ。たとえば、子どもが高熱を出していても、発注先の納期はきちんと守らなくてはいけないし、会社勤めとは違い、在宅ワークの場合、何時から何時まで、という定時がないでしょう。昼間、子ども達の世話やPTAの活動などで時間を取られてしまった場合、仕事は真夜中にスライドされてしまう。もしくは、子どもが遊んでいる傍らで、仕事をしなくてはいけない。子どもにしてみたら、母親が自宅にいるのにも関わらず、自分の方を見てくれない。「待ってて」が多くなる。すぐそばにいるのに振り向いてくれない。そりゃあ面白くないからグズりたくもなりますよね。
夫にしても同じです。仕事で疲れて帰ってきて、妻とゆっくりくつろぎたいのに、妻はすごい形相で机に向かっている。いくら理解のある夫でも、やっぱり不機嫌になる。私にしてみても、なんだか子供が一人増えたような状態で、かなりしんどい思いをしました。
(炭谷)それでは、仕事と子育てにがんばっておられる女性達に応援のメッセージをいただけませんか。男性へのアドバイスでも結構です。
(土生)子育ても大事、家庭も大事、でも、仕事をしたり勉強したりという時間も女性には必要だと思うんです。だから、私は、「できるムリ」と「できないムリ」をうまく見極めながら、仕事の量を調節しつつ、在宅ワークを続けてきました。そんな中で感じたのは、やっぱり、仕事と家庭との両立には、いくつかの工夫が必要だな、と。
まず、仕事を始める場合には、夫にも理解してもらうこと。うまく家事・育児の分担をしていければ理想的ですね。
次に、一度に頑張り過ぎないこと、少しの量から始めていくこと。そして、家族の協力を得るための努力です。よく、”子供は親の後ろ姿を見て育つ”と言いますけど、それだけではダメなんですね。時には、仕事の手を休めて、子供と向き合って、抱っこや頬ずり、言葉での働きかけをしてあげるんです。子供とのスキンシップ・コミュニケーションをこまめにとるようにしていけば、子ども達も母親の仕事に対して理解を示してくれるようになるものなんです。ダンナに対しても、同じことじゃないかなぁ。
それから、在宅ワークを目指したいけど、自己管理がうまくできない人はスケジュール表を作成するといいですよ。「8時〜9時までは家事・9時から11時まではワークタイム、というようにね。この仕事は何時までにやっつけちゃおう、というように目標を作ると、張り合いもでて能率もあがります。
あともうひとつは、周りに理解者がいれば甘える、ということかな。友達との助け合い、預け合う体制を作ると、とてもラクになります。時には、保育ママさんやシッターさんに預けて、いうのもひとつの方法ではないかしら。
(炭谷)どうもお忙しいところ、ご意見ありがとうございました。女性の生き方が多様化してさまざまなライフコースがあり、その多様な生き方を個人の意志に基づいて選択できる