10月14日にベルブ永山で開かれた「団地再生シンポジウム」は約200人の参加者を集め、ホールは満員となりました。特に今回は大学生ら若手の参加が多く、懇親会もにぎやかでした。

基調講演では首都大学東京の上野淳教授が、初期入居団地の問題点を網羅的に説明。「老いても安心して住み続けられる街」を目標に、階段、通路、部屋の仕切りなどあらゆる部分に目配りしてユニバーサルデザイン化を進め、団地全体のバリアフリー化を図ることの必要性を指摘しました。

その後4人の研究者・専門家が、「5階建てエレベーターなし、横に6戸で階段室3つ、計30戸」という典型的な箱型団地のリニューアルを念頭に具体的な提案を発表しました。うち2つについては、今年5月にベターリビング社が募集した「既存共同住宅団地の再生に関する提案」で優秀提案に選ばれており、同社のホームページで詳しく見ることができます。
http://www.blhp.org/info/83/index.html

住宅の改造で共通していたのは、①全面建て直しではなく、部分的な改築で対応②南面の空きスペースに着目し、南面に出入り口や渡り廊下を設置③戸数を減らして、1戸当たりの床面積を拡大したり、コミュニティースペースを確保する―などです。

空いているスペースに増築を繰り返すような拡大のまちづくりではなく、むしろゆとりのある生活空間の確保を狙っている点で、一昨年の本学会研究大会のパネルディスカッションで山本理さんが「これからは引き算の都市計画が大事だ」と話されたのを思い出しました。

会場入り口には、本学会の西浦理事が中心となって制作した多摩ニュータウンの初期住宅の歴史と初期入居当時の様子が分かる写真を配した展示をしました。休憩時間は短かったのですが、足を止めて「懐かしいー」とおっしゃってくださる参加者もたくさんいました。

展示作品については、再構成してこのホームページでも見ることができるようにします。(篠原記)