本学会内に「アーカイブ研究部会」を設け、多摩ニュータウン開発事業の成果と課題について現段階で総括検証する「多摩ニュータウン資料保存プロジェクト」を進めることになりました。一般の市民の方、研究者、学生さんの参加も大歓迎です。略称「アーカイブプロジェクト」の発進です。
【研究の趣旨】
多摩ニュータウン開発が始まってから40年、多摩ニュータウン学会が設立されてから10年の節目の年を迎えております。街づくりを先導してきた新住宅市街地開発事業や土地区画整理事業による都市基盤整備もようやく終了し、今後は住民や企業や行政が自らの手でコミュニティーを育成していくことが求められております。そこで、本学会内に「アーカイブ研究部会」を設置することになりました。
【何をするのか】
具体的には、以下に挙げる3つのプロジェクトの実施を通じて多摩ニュータウン事業の客観的な評価を試みるとともに、各関係機関には、開発にかかわるさまざまな資料の保存と研究のための活用を呼び掛け、今後の地域コミュニティーの育成に役立てていくことを目指します。“街づくり”から“街そだて”へ踏み出す糧となるプロジェクトにしたいと考えています。
【期間と研究資金】
期間は2006年度からの3カ年を予定しています。活動資金としては、本学会で予算化している研究費のほか、中央大学政策文化総合研究所から3カ年で240万円の研究費助成が決まっています。このほか、市民向けのシンポジウム開催などでは地元企業などが出資してつくる委員会を通じて開催費用の一部を負担していただく計画です。

つきましては、本学会員には、アーカイブ研究部会の設立趣旨を理解いただいたい上で3つのプロジェクトのいずれかにぜひご参加いただき、共に歴史を検証し、将来に向けたメッセージを発信していきたいと考えております。
また会員以外でも、ニュータウン開発に興味があり、一緒に研究活動をしていただける方の参加を歓迎します。ニュータウン学会がどんな活動をしているのか、これを機にのぞいてみませんか。

<12月3日アーカイブ研究部会合同打合せ>
アーカイブ研究部会の合同打合せ会議を下記の日時で開催します。参加を希望される方は、希望するプロジェクト名(1~3の番号)を理事の西浦(電話・FAX 042-591-9791、E-mail nishiura@es.meisei-u.ac.jp)までご連絡いただいたい上で、会場にお越しください。最初の会合ですので、興味のある方は気軽にご参加ください。
日程:12月3日(日曜日) 14:00-17:00
場所:明星大学24号館(通信教育棟)402号室
多摩モノレール駅からすぐ。以下のHPで確認ください
http://www.meisei-u.ac.jp/campuslife/hinoAnnex/introduction/index.html

プロジェクト1
<歴史を振返り、将来をみつめる市民シンポジウム>
本プロジェクトでは、「多摩ニュータウン ルネサンス~街づくりから街そだてへ」(仮称)をテーマにした全3回程度の市民シンポジウムを、多摩ニュータウン関連企業の街そだて支援事業(仮称、調整中)の適用を受けて開催したいと考えています。多摩ニュータウン学会では、これまで好評のうちに2回実施した「謎解き多摩ニュータウン~蔵出し資料を読む」(多摩市立図書館との共催)を今後も継続していく考えですが、この「街づくりの謎解き」というコンセプトを生かした「特番シリーズ」として位置づけていきます。
やり方としては、シンポジウムのパネリストを「謎解き案内人」、本プロジェクトに参加していただく学会員の方を「謎かけ人」とし、謎かけ人からの問題提起を受けて、謎解き案内人が専門的な立場から、40年間にわたる多摩ニュータウンの街づくりに込められた真相に迫っていただこうと考えています。
従って、本プロジェクトに参加していただく方には、シンポジウム開催の1、2ヶ月前から問題提起のためのデータとメモを作成する作業に加わっていただくことになります。シンポジウムの成果については、毎年発行されている「多摩ニュータウン研究」に収録するとともに、3年後には全体を報告書としてまとめる予定です。
その第1回目を新春イベントとして来年2月末ごろ(2月24日で調整中)の開催を目指し、多摩ニュータウン ルネサンス第1回市民シンポジウム「多摩ニュータウン開発の成果と課題を踏まえて~街づくりから街そだてへの模索~」と題して開催したらどうかと考えています。部会での議論を踏まえ、開催準備を急ぎます。(担当理事・西浦)

プロジェクト2
<多摩ニュータウンをつくったキーマンのオーラルヒストリー作成>
計画策定時からいろいろな問題に突き当たりながら進められてきた多摩ニュータウン開発ですが、そのおおよその経緯は『多摩ニュータウン開発の歩み』(東京都南多摩新都市開発本部、1987年)をはじめとして、いくつかの報告書になっています。
しかし、これらに書かれているのは、いわば「結果」です。結果の裏にどのような意思決定過程があったのか?これは、実際の当事者にお話を伺う以外に知りようがありません。開発草創期に、さまざまな立場から実際の意思決定の現場に立ち会い、歴史をつくってきた当事者の方々が、いまご高齢になりつつあります。
本プロジェクトでは、多摩ニュータウン開発の意思決定過程を明らかにすることを目的に、こうした当事者の方々約20人から聞き取りを行い、活字化して資料とします。
聞き取りにより得られる歴史、口述の記録を「オーラルヒストリー」と呼びます。話をお聞きする対象者は、地元の元地権者、旧公団・多摩市・東京都・首都圏整備委員会関係者など、当時計画決定に影響力を持っていたキーマンの方々となります。
このプロジェクトに参加いただく方は、実際のインタビューや質問の準備、映像撮影、録音をテープ起こしされた原稿のリライト、報告書の執筆など、自分のテーマや興味に応じて力を発揮していただくこととなります。
また、活動の成果は3年後に出版することを目指します。(担当理事・中庭)

プロジェクト3
<自分だけのニュータウンヒストリーの作成>
多摩ニュータウン開発の歴史を、街に普通に暮す人たちのオーラルヒストリーとしてまとめることで、住民の視点からニュータウンの「今まで」を総括し、ニュータウンの暮らしの「これから」を考えていくプロジェクトです。
具体的には、多摩ニュータウンに住む人たちの生活史をインタビューで聴取し、参加者(取材者)なりの切り口で原稿にまとめます。最初は高齢の方々を中心にお話を伺う予定です。また、原稿はインターネットのサイトに掲載し、広く社会に公開する予定です。
ヒストリーの作り方の研究やテーマの検討などを部会内の勉強会やワークショップを通じて行いますので、参加してくださる方はヒストリー作成のノウハウも学べます。最終的には、この活動をニュータウン全体に広げ、「ニュータウン住民の歴史」をテーマにした書籍発行を目指します。
会員の皆様にお願いしたいこととしては、プロジェクトそのものへの参加はもちろんのこと、このプロジェクトの事務局員として参加していいただければと考えております。特に以下のようなことに興味がある、得意だという方大歓迎です。
・プロジェクト全体の企画・運営
・この活動を「学習プログラム化」するための手伝い
・インターネットサイトの企画・製作・運営
・お話を伺う方々のリストアップやインタビューの手配
・出版化への手伝いなど
(担当理事・松本)