※この項目は「多摩ニュータウン研究」第8号からテキストを転用しました。
2005年度第3回 研究会 ~2006.1.28~
謎解き多摩ニュータウン~蔵出し資料を読む
「資料保存プロジェクト」の序章として
(多摩ニュータウン学会・多摩市立図書館共同企画)
○ 40年目の危機
多摩ニュータウンは1965年の都市計画決定から40年がすぎました.いまだ未完成な部分も数多く残していますが,都心の住宅難解消といった国家的見地に立った初期の目的は達せられたことから,都市再生機構(旧都市基盤整備公団)や東京都は開発事業からの本格的な撤退を決めました.
こうした中,多摩ニュータウン開発にかかわるさまざまな資料が廃棄されたり,散逸してしまうのではないかと心配する声が,各方面からニュータウン学会に寄せられるようになりました.
多摩ニュータウンにかかわる資料は,日本の20世紀後半を代表する地域開発のあゆみを記録していると同時に,都市開発のさまざまな局面における解決策なども提示してきたものです.少子高齢社会を迎えた21世紀の住宅問題を考える際にも,基礎資料となるでしょう.
○謎解きをきっかけに
そこで,そうした資料を保存することの大切さを訴えるきっかけにしようと,多摩ニュータウン学会は多摩市立図書館と共同で2006年1月28日,「謎解き多摩ニュータウン~蔵出し資料を読む」と題する一般市民向けの講座(ニュータウン学会での位置付けは研究会)を開催しました.
図書館との共同企画になったのは,図書館としても,ニュータウン関係の資料については従来から郷土資料の位置づけで収集に力を入れてきたところですが,さらに資料の利用価値を広くアピールしたいとの意向があって,本会側の意向ともちょうど合致したため実現したものです.
実際にニュータウンのまちづくりに携わった経験もあるプランナーの方ら3人が謎解き人として登場,それぞれに2つずつ用意された謎に対して資料を使いながら答えていくという流れで,発表手法にも工夫を凝らしてみました.参加者は40人を超え,話が分かりやすかったと好評で,続編を望む声が多く聞かれました.
一般利用者が帰った後の図書館の閲覧室が会場でしたが,本に囲まれた空間での研究発表というのは,絶大な臨場感があって,また機会があれば利用させていただきたいと思いました.共同企画の立案,会場の設営などでは多摩市立図書館の倭文純子館長,阿部明美さんほか,多くの方のお世話になりました.この場を借りてお礼申し上げたいと思います.
準備された発表内容に比べ用意した時間が足りなかったのが最大の反省点でしたが,本誌に掲載した各報告は,当日の発表をベースに報告者ご本人が引用図表などを選び直し,文章も本誌用に書き下ろしたものです.取り上げた題材の時代などを勘案,掲載順序は当日の発表順とは入れ替わっています.(担当理事・篠原)
「記録」
※詳しい内容は「多摩ニュータウン研究」第8号をご参照ください
謎解き多摩ニュータウン
~蔵出し資料を読む
2006年1月28日(土)18時~20時
永山図書館 南側閲覧コーナー
1.開会あいさつ 倭文純子多摩市立図書館長
多摩市立図書館として,これまで行政資料はもちろん,ニュータウンなど地域に関する資料の収集にも力を入れてきたところです.まちづくりを進めてきた公団などの組織がいろいろ変遷を遂げていく中で,今回,資料の散逸を心配する方々,多摩ニュータウン学会と一緒に講座を開催することができました.
郷土資料というものは,忘れられ,どこか奥の方にしまわれてしまうものではなく,今のまちの問題を考え,より良いまちにしていくための材料として活用していくべきものと考えます.行政郷土資料を使って,こんなにおもしろいものなんだということをみなさんと一緒に実感し,あわせて,資料の大切さも実感できればと思います.
2.謎解きその1 成瀬惠宏氏
謎① 多摩ニュータウン計画に対し,地元,とりわけ多摩市の意見は反映されたのだろうか?
謎② 商業集積地の計画で,永山,多摩センター,聖蹟桜ヶ丘の機能分担,調整は行われたのだろうか?
3.謎解きその2 宇野健一氏
謎③ 都心に最も近い稲城市の開発が遅れたのはなぜだろうか?
謎④ 稲城市域の計画づくりでは,先行した多摩市での経験や教訓が生かされたのだろうか?
4.謎解きその3 篠原啓一氏
謎⑤ 多摩市に昔あったというアパッチ砦とは何か? 今はどうなっているのか?
謎④ アパッチ砦の存在は,ニュータウン開発においてどんな意味があったのだろうか?
5.図書館側から多摩ニュータウンに関する資料のガイダンス
6.意見交換・まとめ 吉川徹氏
「まちづくりの担い手を市民に」と題して,資料はまちの成り立ちを表す「取扱説明書」と説く.