八王子市鑓水あたりを源流とする大栗川は、多摩ニュータウンを流れる母なる川です。今回のウオッチングは、京王線堀之内駅集合で、そこから大栗川に架かる橋では一番近い新道橋へ出て、鑓水方面に向かって川に沿って歩きました。
ちょうど桜が見頃の時期であり、歩くには天候も気温も程よく、コースの途中までは立派な遊歩道が整備されていますので、のんびりお花見気分の楽しいウオッチングとなりました。参加者は親子連れを含めて18名、講師、案内役は学会理事の高田一夫さん(元東京都南多摩区画整理事務所副所長)で、由木土地区画整理事業完了時の責任者で緑道、公園等の設置に携わった方です。
新道橋の一つ東にある洗馬川橋上から、下流を遠望した後、右岸にある堀之内番場公園で、まず高田さんから大栗川についての概略説明がありました。
「大栗川は南大沢あたりから流れる太田川と堀之内あたりで合流し、多摩市に入ると乞田川と関戸あたりでまた合流して多摩川へ流れ込んでいます。大栗川、太田川、乞田川の3河川で大栗川水系。多摩川水系のその支川の大栗川水系です。
ニュータウンの方から見ると、大栗川に向かってかなりな急傾斜になっています。本来なら樹林地帯に降った雨が大栗川に下りてくるのですが、最近は道路など舗装が進んでいるので、どうしても川に水がこない。流量も自然に減ってきています。丘陵の樹林が開発でなくなってくると本来の川が生きてこない。
大栗川水系は多摩ニュータウンの開発にともない、治水効果の早期実現を最優先課題として改修が行われました。昭和41年の台風4号によって、3河川合せて氾濫面積76f、浸水家屋1211棟という大きな被害を受けたからです。改修工事はとにかく早く水を下へ流すために、蛇行していた大栗川を直にし、河道は単純化されました。また岸はコンクリートの擁壁としてしまったので、水辺の植生は減少、魚の棲息場となる淵も消滅、さらに水質の悪化、平均流量の減少、落差工の設置等、魚類の生息が困難な状況となり、潤いのない河川景観となっています。
河川法では、川は一級河川、二級河川に分類され、一級は国、二級は都道府県の管轄になっています。したがって、大栗川水系の改修は本来なら都の建設局が行うのですが、ニュータウン関連事業ということで、南多摩新都市開発本部が改修を行いました。昭和43年度に着手、61年度末に完了、河川管理者に引き継がれました。
大栗川の流域面積は42.6ku、幅員20m〜78m、流路の延長15.5qです。改修工事の内
容は降雨毎時60o対応ということで、通常の洪水には十分耐え得ることになっています。
川は都市部では唯一の残された自然であり、自然の営みと人間の活動が交わる場所で
す。大栗川水系を、多くの生き物の生活場所として蘇らせ、川の生態をいつまでも良
い状態で未来へ残すことが、私達の努めではないでしょうか。」
平成4年に治水対策という時代の反省も含めて、大栗川水系河川環境整備計画が作られ計画に沿って由木土地区画整理事業の中で、川沿いの遊歩道や20箇所の公園を整備しました。しかし、肝心の川の方はまだまだこれからの状態。やはり、地元の人達が声を出していかないと行政はなかなか動きません。
とはいえ、昨年東京都も循環型社会の形成を目指して水環境保全計画を作りました。大栗川、乞田川についても、目標、主な課題、施策の方向などがまとめられています。川を生き返らせ、水遊びや散歩を楽しめるようにするのが目標ですが、コンクリート護岸や落差工を無くさないことには魚も溯上できません。
川は都市部では唯一の残された自然であり、自然の営みと人間の活動が交わる場所です大栗川水系を、多くの生き物の生活場所として蘇らせ、川の生態をいつまでも良い状態で未来へ残すことが、私達の努めではないでしょうか。」