第2回 研究会「女性の就労問題を考える」 質疑応答

司会:これまでにいろいろ核心に触れる質問が出ていますので、それぞれの立場でお答え戴きたいと思います。

<結婚しない,子供を持たない女性の生き方・女性の旧姓の使用について>

「お二人のお話は現実的であり前向きで素晴らしいと思いました。今日のお話は結婚あり、出産ありというでしたが、そうでない道を歩んでいる人についてどのようにお考えでしょうか。また職場、企業での旧姓使用についてよく取り上げられていますが、身近に使用している方はいますか。」

 この質問の後半の「旧姓使用」は具体的な話ですので、まずベネッセコーポレーションの内容を教えていただきたいと思います。それからお二人に「結婚,出産なしで働いている人(同性)」についての意見を聞かせていただきたいと思います。

二井矢さん(以下敬称略):ベネッセコーポレーションでは旧姓使用が普通です。私のように結婚して名字を変えたというのは稀です。一個人が結婚しているか、していないか、子供がいるかいないかは仕事上は分かりません。

 近くにいてはじめて、この人は結婚している、子供が居るということが分かることが多いです。 ベネッセコーポレーションの場合は特別かもしれませんけれど、全く問題なく旧姓を使用しています。

司会:ベネッセコーポレーションの女性社員の割合はどれくらいですか。

二井矢:約6割ぐらいです。

司会:結婚や出産抜きで仕事をしている女性に対しての意見をお願いします。

杉本さん(以下敬称略):私の妹が33歳になりますが、結婚せずに大学病院で働いています。仕事と結婚の両立を考えてときに、やはり難しいと思うのか、結婚せずに働いています。その妹を見ていて、どこかに子供がほしいなとか家庭があったらなという思いを持っているようにも思えます。

 妹の自由な生活をみていいなとうらやましい思いも持ちますが、やはりすべてがうまくいくのはなかなか、ないのではと感じました。

二井矢:ベネッセコーポレーションでは女性の管理職もたくさんいます。そのうち結婚して、子供がいる人もいますし、シングルで仕事をバリバリこなして自分のマンションを持っていてという働き方をいる人もいます。個人の人生ですので、結婚するとか子供を産むとかはその方々の考えによるのかもしれませんが、私から見れば、「子供を産んでみると面白いよ。子供生んでみたら…」という感じもします。

 ただ、子供がいるとか、家族のことは職場では誰からも感じることはないのですが、女として生まれたからには子供を一人ぐらい産んでみたほうがいいのではないかしらというように個人的には思います。30代でシングルの方が非常に多いです。30歳ぐらいまでに結婚のピークがきて結婚する人は30ぐらいまでに結婚しますし、30過ぎると「まあどちらでもいいかな」、35過ぎるともう「面倒くさい」というような感じで、40過ぎると「他の人と暮らして波長を合わせるのも大変だから私はもうひとりだわ」という方が多いです。

<ベネッセコーポレーションについての質問>

司会:他にもいろいろな質問がきています。ベネッセコーポレーションについて幾つか質問がきています。「ベネッセコーポレーションの新しい制度、カフェテリアプランについて社内の評判はどうですか。」「ベネッセコーポレーションの勤務体制は男性にも大きなメリットになっているのでしょうか。」この二つの質問にしてお願いします。 

二井矢:まず、カフェテリアプランについてですが、福利厚生に関するものでして、社宅、育児支援、医療費の補助、人間ドックの補助といったいろんな個人向けメニューがありまして、年間9万2000円(92ポイント)の中から、自分の好きなメニューをポイント分だけ使えるというシステムです。

 これは厚生省が考えたプランで制度自体はとても良いので普及させようとしています。 けれども、現在この制度を実施している会社は西友さんとベネッセコーポレーションぐらいです。

 なかなか昔ながらの人事慣行があるところではなかなか難しいのではと思います。それぞれ、自分が必要なものを一定の限度の中で会社からお金を補助してもらうという考え方なので、自由に使えるという面ではこの制度は生きてくると思います。特に子育てに関してはあつく支援して戴いています。

 例えば、子育て中ならば月に1万5000円ずつ補助してもらえるとすると、通常は15ポイントとなりますが、子育てに関するポイントは半分の7ポイントとなります。子育てをしながらの制度としても重要な役割をていると思います。あとは奥様が働いていない男性社員に対しては、家族の人間ドックとかお子さんの医療費としても使えるので社員からは好評です。

 「ベネッセコーポレーションの勤務体制」についてですが、先ほどお話したようにスーパーフレックス制度です。旧来のような制度ですと、長時間働いて結果を出すと、あの人は仕事の出来る人で頑張てると評価されました。しかし新しい制度では長時間働くのがいいことではないと、会社側も積極的に認めています。今までダラダラ残業をしていたかもしれない男性社員の方も、6時半や7時に帰れる日もあるということで、男性社員にとっても、部下がいるから長時間会社に残らなくてはいけない、管理職だから残らなくてはいけないということは無くなったので男性社員にもメリットは充分あると思います。

また早く帰れることで家族にも喜ばれるようになったのではないかと思います。

<ゆづり葉への質問>

司会:ゆづり葉の方にも質問がきています。「NPO化を検討されていますか」というものですがどうでしょうか。NPO化のメリットとデメリットについてお聞かせください。 また、「市民事業の立ち上げ時の一番の問題は何か」という質問もきていますので、場所、資金、ノウハウ、どういったものだったのか、また地域に関わる仕事するという志と事業性の兼ね合いも含めながらお願いします。

杉本:NPOのことですが、「特定非営利活動法人」のことをいいます。年末には登録が始まります(98年12月1日施行)。法人化はずっと検討課題でしたが、話し合った結果、今の段階ではメリットがあまり出てきませんでした。いまはデメリット、税金を払わなくてはいけないことなどがありますし、市民事業の法人化の風潮に、安易にのってしまうのにためらう気持ちもあります。

 2000年から介護保険が始まりますが、移送サービスは福祉サービスのなかに含まれません。移送サービスが福祉サービスの中に入るかどうかの判断は行政にまかされています。そうすると移送サービスは上乗せサービスという扱いになりますので、その市のお年寄りの負担が増えてしまうことになります。ですから、一概にどのサービスも扱うようにというわけにはいきません。また、はずれることで市民事業としての多様性が出てくるのではないかと考えています。

 財政面のことですが、一年立ちましたが、深刻な赤字です。運転者には時給750円を払っています。事務所には毎日人が詰めていますし、移送が入っていない時でも事務の方には時間給を払っているので赤字になります。

 移送サービスの件数は昨年1年間で610件、今年度はもっと増えるとは思いますが、非常に苦しい状態で運営しています。そのようなわけで、事務所は会員の方の自宅横に事務所的なものを作っていただきまして、ほんとうに微々たるものですが、家賃をお支払いして事務局を運営しています。

 今日、皆さんとお会いして、名刺を頂いていますが、私どもの方は名刺を作るお金もないほどの状態です。

 東京都に助成制度として福祉振興財団がありまして、この財団が景気の良い時はずっと助成をしてきたのですが、97年度からいくつかの助成制度が取り扱われなくなりました。

 私どもはその話を、事前に聞いていましたがそれでも事業をやってみようということで始めました. その助成制度は年間で500万円から2000万円ぐらいの助成があったのですが、それがない状態で始めたので苦しいわけです。NPO法の関係もあって、今後は市のほうが助成制度の窓口になって、制度を整えていくようなります。

 多摩市では今後市民とのパートナーシップとして、福祉の面で共働事業を進めていくことにしています。福祉のネットワーク作りをして、負担が軽くて、厚いサービスが出来ないかと、市の関係者、他の団体の方と連絡を取り合っています。私どもは設立当初から、多摩市から「タクシー助成制度」の適用を受けています。これは年間5万1000円、障害4級までの方たちは利用できます。

 ゆづり葉は全く実績がない状態で適用を受けました。そのときはこれが大変なことだと分からなかったのですが、東京ハンディキャブ連絡会で、このことを報告しますとすごいことだと言われました。ですから、何があってもこの移送サービスを継続していかなければならないと日々責任の重さを感じています。

<女性の視点から見た若年層減少への市政の対応>

司会:ありがとうございました。引き続き質問を続けたいと思います。「多摩市はニュータウン地域を中心に若年層人口が減少しています。女性の立場から市としてどのような対応が求められているとお考えでしょうか。」という質問です。先ほど保育制度の充実というお話も出てきましたがいかがでしょうか。

二井矢:保育制度の中でも、特に病児保育というのは、子育て期の母親の深刻な問題なので、病児保育が充実していただけたら本当にいいのではないかと思います。

司会:稲城市では今年度より全保育園が0歳児を産休明けから預かっています。それから午後7時半まで預かり保育をしているのが4箇所あります。また、稲城市は人口6万4000人の割合に対して、保育園の数も多いです。そして、稲城の17%はニュータウン地域でして、NT内の学校には、小学校内に児童館が作られています。

<性的役割分担と税制度>

司会:次の質問です。「性的役割分業についてですが、この役割分業を誘導するような制度(税金、年金)についてどう思われますか。女性が頑張れば良い、ということでは、スーパーウーマンでないと子供を産まないという社会になると思うのですがどうでしょうか。」では質問についてお願いします。

二井矢:私のように仕事をして子供を育ててという者にとっては、専業主婦の方が受けている、税制上の優遇策というのは非常にどうしてという思いを持ちます。私は厚生省の友達におかしいよねと話したところ、もともと厚生省がこのような優遇策を行ったのは、専業主婦が自分や夫の両親を介護することを前提としていたそうです。

 しかし、実際は介護をなさらない方が多くて、病院に入れて、子育てが終わっていれば、ご自分は自分の生活を満喫している方もいるようです。専業主婦を非難しているわけではありませんが、国の作った制度があまり上手くいかなかったようです。けれども、こういった優遇制度は一度手に入れたら手放したくないし、学生からでも国民年金は取るのに、主婦からは取らないのはどうしてという思いがします。厚生省では5年ごとにこの制度の見直しをするそうでして、今度の見直しでは産後被保険者の制度についてはかなり変わる可能性があるとのことでした。103万円以上働くと税金が取られるから働けないという縛りは、働きたいという気持ちを持つ人にとっては障害になるでしょうし、103万円以上働くと手取りが少なくなるから働けないというのは、おかしいと思うので、誰々の妻というのではなく、個人個人の税体系にいくのが、私、個人としてはやはり、いいのではないかと思います。

 そして、生涯通じて働いた人にはそれに見合うだけの年金がもらえるようにするべきだし、自分が30年ぐらい働いてもらえる年金より、たくさん稼ぐ人と結婚して主婦になっていたほうが年金が多いという制度を若い女の子が知ったら、「じゃあ、私もお金持ちの男性と結婚した方がいいわね」ということにもなりかねないですし、私は若い時にそういうのを知る機会が無かったので、たまたま働く道を選んでしまったので、それを知った時に夫とこんなこと知っていたらあなたと結婚してないわよ、と話したこともありました。今はこのような仕組みになっていますが、ここは今後是正されていくべきでしょうし、働く女性としては、ここのところは、直ちに変えて頂きたいと思いますし、学生さんからもお金を取っているのはおかしいと、率直に声をあげたいと思います。

 あと、制度が変わってほしい、男性が変わってほしいというのはありますけれど、自分が今出来るのは何なのか、考えるとすぐ出来ることは自分が頑張ることだと思います。男性の意識を変える、企業の意識を変える、パートナーの意識を変えるのは時間をかけてやっていくしかないと思います。

 制度的なことなどは、おかしいことがあれば声を挙げて変えていく、選挙で自分の意志表示をするというように時間をかけてやっていくことで、では自分に今出来ることは何かと考えると、それはやはり、「今出来ることを頑張る」ということだと思います。

そして、時間がかかっても、変えられることは変えていきたいと思います。

司会:ありがとうございます。杉本さんはいかがでしょうか。 

杉本:私は税金、年金の制度について見直しが必要だなと思っています。私が特に気になるのは、「子供が20歳すぎても、学生のとき年金をどうするか」ということです。私の家庭では、一度私が勝手に払ったら、子供が「自分が働くようになったら自分で払うから払わないでほしい」と言われました。そして、2年間置いておいていいということでしたので、そのようにしておきました。
 私の周りには、自分の親のために子供の年金を払うという考えの方も多いです。このようなことを考えると今後見直しをしなくてはいけない制度だと思います。

 それから、女性が頑張るということに対してですが、「女だからこう、男だからこう」とう意識が女性の中にもあるのではないかと思います。女性側にも「女だからこれぐらいでいい」という閉鎖的な考えがあるように感じます。ですから、社会や地域を変えるには、家庭の影響も大きいと思いますので、外に出て頑張るやり方もありますが、家庭の中から意識的なもので、自分が変わって夫にも変わって下さいというところを努力していく必要もあるのではないかと思います。

<後輩女性へのアドバイス>

司会:ありがとうございました。「今年、新卒として就職活動をし内定を取りましたが、仕事をしていく上で、アドバイスがありましたら、お願いします。」ということです。

二井矢:仕事をしていると、楽しいこと、辛いことなどいろいろあって、辞めたいと思うこともあると思うけれど、結局は自分が仕事をどのように楽しんでやるのかが大切だと思うので、たとえば自分の希望していない仕事など、どんな仕事でも、いかに楽しくするかが生きていく才覚ではないかと思います。これは仕事の上だけだけでなく、生活、人生においてもいえることだと思います。

 私のような普通のものでも10年仕事をするとこのように皆さんの前でお話できるようになるので、ぜひ後に続いて頑張ってほしいなと思います。

杉本:ここ最近、「働く」ということについて考えつづけています。今現在、多摩市に「ワーカーズコレクティブ 風」という団体があります。この一年間同じ事務所で机を並べて活動をしてきました。

 そこでは「ハンディのある人ない人、全く同じ立場で働く場所を作りたい」という考えを実践しています。彼らを見ていると「働くとはどういうことなのだろう」と考えさせられます。彼らのメンバーの一人に22歳の知的に障害のある人がいるのですが、彼が「大人になったら働く?」とよく聞いてきます。彼自身はあまり働きたくないのですが、自立してグループホームというところに入って働いて報酬を得なければ、生活していけないという現状があります。障害のある人がいつまでも、親の元で暮らしていけるということはありませんので、このように自立していかなければなりません。

 私は彼に聞かれるたびに「そうよ。大人になったら働くのよ。」と答えていますが、「どう答えればいいのかな」と自分で首を傾げてしまいます。また、同じ年頃の女の子で自分が就職していないことを責めてしまい、自分を追い詰めてしまうことがあります。能率や効率だけを優先しない働き方があってもいいのではないでしょうか。「その時にその人に出来る働き方」といいうような緩やかな考えの働き方が出来るためには、私たちのような活動が必要なではないかと思いますし、NPO法によりこういった活動が自立していける状態が早くきたらいいなと思っています。

司会:ありがとうございました。お二人の実感のこもったお話が伺えたと思います。

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