第2回研究会「女性の就業問題を考える」 質疑応答 続き

司会:今までの質問は終わりましたので、これまでのお話をもとにさらにいろいろなご質問などがあると思いますので、こんどは皆さん側からご意見などありましたら、お願いします。

<職場と住居 −職住接近−>

深沢さん(以下敬称略):深沢と申します。先ほどからお二人のお話を聞いていて、なかなか素晴らしいなとおもいました。そこで、順調に家庭生活を送り、子供を育て、ご主人は都心の役所へ勤めてらっしゃるというようなことで、共稼ぎには非常に困難がともなうと思うのですが、それをスムーズにこなしてらっしゃるのは,やはり「勤め先と住居」のことがあると思います。わたしの周りでも結婚しても働いている女性が居ますが、その人達にとって出産は大きな問題になります。というのは、妊娠時に都心へ通勤するとなると体力的、身体的に負担が大きく流産することが多いからです。そうするとやはり「職場と住居」は働く女性の大きな問題となってくるのではないかと思います。

二井矢さん(以下敬称略):私も妊娠している時に西葛西から九段下の本社まで、東西線で通勤ラッシュの中を通勤していました。その時は大きなおなかを抱えて満員電車に乗るのは本当に辛かったし、転んでも誰も助けてくれないし、かえって邪魔者扱いされたことがありました。

 ですから、今ベネッセコーポレーションから15分唐木田に住んでいるのは、仕事を続けていける最大の要因だと思います。

深沢:私も「職住接近」はとても重要なことだと思います。それからもうひとつ思ったことがあります。それは最近の家庭内の労働が軽減されてきていて、子育てに人段落ついて時間に余裕の出来た女性が何に生きがいを求めるかが問題になると思います。私はただ時間を趣味などに費やすのではなく、自分の得た知識技能を社会に還元していくのが望ましいと思います。例えその活動が金銭的に大きな報酬が得られなくても、生きがいを持って社会に自分の力を還元することは精神的に充実ていいのではないかと思います。

 そういう意味で、「ゆづり葉」のような行政でもないビジネスでもない、第3の市民事業がこれから重要な役割をもってくると思いました。

司会:ありがとうございました。他にご質問やご意見がございましたらどうぞ。

<高齢化社会と女性の役割>

 では私の方から、お話致します。先ほど市として若年層のためにどのような対策が必要かという話が出ましたが、その他に、高齢化社会に向かって女性が高齢者の介護をしてくれるだろうというのが、実はそうではなかったというように、介護よりむしろ労働力として期待されている面があると思います。

 私は平成5年に父が,7年に母が癌で亡くなりました。その時に私は仕事をしながら看病をしなければいけなかったので、やはり負担が大きかったし切実な問題でした。最後には法的なものはあてにならず、駆け込んだのが家政婦紹介所でした。そこで24時間泊まり込みの介護をお願いしました。これが病院に通ってもらうより安かったのです。というのは交通費が要りませんし、時間単位ではなく1日いくらという計算だったからです。

 私は稲城市の市議会員をやっていまして、議会中にそのようになったこともありまして、実際に議会に提案させて頂いて今年から24時間パトロール介護サービスも生まれました。

 高齢化社会対応というのは今後どんどん進んでいくと思います。これは高齢者に対して手厚いとばかり思われますが、しかし助かるのは、高齢者だけでなく支える家族の側にとっても大きな助けになるのです。そういった政策をもっと充実させていかなければ、本当に恵まれた人しか働けないということになると思います。しかしそれではいけないのでこういったことから、制度を充実させていく必要があると思います。

<働くことの意義>

杉本さん(以下敬称略):私が夫に「働くってどういうことだと思う」と聞いたところ,「報酬を得ることでしょ」と答えが返っていました。それまで働き方に対する考え方は一緒だと思っていたので、これを聞いたときに私はすごくショックでした。それまで、夫のことを企業人としてはなかなかいいかなと思っていました。例えば、聖蹟桜ヶ丘の駅前開発での意見書を提出した時に「これ以上産廃物を増やす必要はないのではないか」「大駐車場をつくって、環境汚染をこれ以上すすめない様に」それと教育的なことも書かれていたので、これらを見てそう思ったのです。 

 しかし、「働く」という意識のずれがあったことで、「働くことが報酬を得ることなら、私は今まで何をしてきたのだろう」と考え、つまずいてしまいました。そして夫とも話し合いました。私自身、就職したことがありませんでした。私と主人は出身が大阪です。就職する時に夫が東京で職に就くことになったので、「就職」か「永久就職」かで「永久就職」をしました。その当時は女性が働くということを考えるのがあまり、身近ではありませんでした。

 それがふとしたきっかけから、40過ぎて働かないかということになりました。その働き方はフルタイムで、扶養をはずれてというものです。子供も大きくなっていたので子育てがあるという障害は無かったのですが、その時は非常に迷いました。私は働くという意味ではそれまで家事労働をずっとやってきましたが、就職をしたことが無かったからです。そこで、夫とよく話し合い、その結果やってみようということになりました。不安もありましたがはじめてみると、何とかなりました。

 仕事は多摩市の生協で嘱託職員として勤めていました。そこで数年働いた後、もう後何年か続けて働かないかとお話を戴きました。そこで働くということを再び考えた時に、自分は地域の人とのつながりを活かしていく働き方をしたいのだとあらためて実感しました。それと同時に、自分が地域に居ないときに自分が知らないところで地域が変わっていってしまうのが嫌なのだということにも気がつきました。

 その時にちょうど、夫に「働くってどういうことだと思う?」と聞いて「報酬を得ること」と答えが返ってきたのでショックを受けたのです。結局、その仕事は辞めることにしました。そのことを上司に伝えると私が引き続き仕事をやっていくものだと考えてらっしゃったようで、大変驚かれました。「経済的にも,社会的にも保証されている仕事なのにどうして?」と聞かれたので、「地域に密着した働き方をしたい」ということを話しました。その時に私の中には地域密着ということと「こういうふうに働きたい」という意志を持った働き方がしたいという考えもありました。私が辞める意志理解してくださった上司が最後に「辞めるのか、いいな、俺も辞めたいよ」と本音を漏らしたのが印象的でしたし、ふと夫のことが頭に浮かんで、「夫もこういう思いをしながら働いているんだな」と思いました。

司会:ありがとうございました。男性女性それぞれに働き方に対する考え方の違いがあり、一緒の家庭で長く生活していても、機会があって話し合わないと分かりにくいけれど、話し合うことでお互いの新しい面を発見していくことも出来ます。杉本さんは話し合っていくうちに、自分の仕事に対する考え方を再認識したとのことでした。

<子育てに必要な環境の整備>

 二井矢さんは女性が子育てをしながら働く時に、住まいの環境と多摩市の保育制度など子育ての環境が恵まれていたというお話でしたが、他に足りなかったことはありますか。また、今後の子育てに関する考えがありましたらお聞かせください。

二井矢:私が子供を育てながら仕事をする上で、乗り越えなければいけない事に両親の介護が無かったことは幸いでした。そうすると他に何が一番大きな障害かと言いますと、一緒に暮らすパートナー、夫の意識があるのではないかと思います。

 私の場合は夫が「『女は家に居るもの』という考えはどうかしている」という意識を持っていて、「専業主婦は戦後に出来たもの。それまでは女性は農作業をして働きながら子育てもしていたのに、戦後たまたま、家に居る時期があって、それが今も続いて専業主婦という考え方があるだけだよ」と言っていました。ですから、「家に居てほしい」という夫の無言の圧力を感じることもありません。

 そして、夫の母も働いていたので、姑の「どうしてあなたは働いているの」という圧力もありませんでした。 

 私の周りに仕事を続けていくのに障害になるものが少なかったので、自分の意志で仕事を続けてこられたということはあります。あとは女性が仕事を持つのは当たり前という意識を持って続けていくための条件をいかに揃えていくのかが自分にとって大きな課題でした。

 大変だから、仕事を辞めたいということも無かったし、忙しい中でもいろいろなことが出来るというのは幸せで、自分や子供,夫が健康であればこそ出来たのです。これは周りの方に支えてもらったおかげなので、感謝しています。

<女性が仕事を続けていくために>

司会:女性が仕事を続けていく中で、環境の整備は重要な課題だと思います。これは男女雇用機会均等法など、法的な面では進んでいますが、先ほどお二人がお話されたように男性の意識も問題になるのではないでしょうか。

 例えば,「女性はすぐ辞める、労働能力が劣る」といった考えや、採用側の意識,労働環境の整え方が日本にはあると思います。それは「男女の役割分担の意識と実態」という調査の男性女性の意識を見ていただくと分かるかと思います。また、女性自身でも「男性は仕事、女性は家事」という考えに同意する人が多いようです。

 このような状況の中で働くには自分も健康で、子供や夫も健康であることが前提となります。杉本さんはこのような状況のなかで、地域に密着した仕事を、二井矢さんは職住接近という形をとって仕事をされていました。

 先ほどの二井矢さんは「周りの人に感謝したい」と話されていました。私も仕事を持っていますので、このことはここにいる三人の共通した考えでもあります。たまたま揃った条件の中で周りの人に助けられながら続けていられるので、感謝が絶えないのですが、しかし、そうでない部分もまだあるのではないでしょうか。

 東京都でも「男女雇用機会均等法」の勉強会が行われています。女性のための労働環境をどう整えていくのか、セクハラ等の問題も含めて、企業や個人に対し公、私、行政が取り組んでいる最中です。

 杉本さん二井矢さんは今健康で仕事などの条件にも恵まれていますが、これまでにこれが理由で辞めたいと思ったことがあればお話ください。

二井矢:私の場合、家事も育児も私の手にかかっていて、しかも収入も私の方が多いという状況の中で、「なんで私だけがこんなに頑張らなくちゃいけないんだろう」とものすごく不安に思っていた時期がありました。 しかしこの不安な気持ちをぶつける先もなく、この収入で家事も育児も私がやっているなら、結婚していなくてもかまわないのではないかと思ったことがありました。でも、やはり私一人ではなくて夫がいてこそ、こうやって頑張れるのだと思います。

 そして、「なんでだろう、なんでだろう」と考えていても、何も生まれないので、楽観的に考えて「こんなに出来てえらいじゃない」と自分で自分を励まして毎日過ごしています。

 大変なことが起きても、笑顔で楽しく乗りきろうと自分で割り切るようにしました。 こうして考えていると仕事でのつまずきも全部良い方に考えられて、失敗した時でも次はこういうようにやろうと思えるようになりました。「気持ちの持ちようが大切」と感じています。

杉本:私は結婚して23年ほどになります。最初はいろいろ合ったと思いますが、その間にお互いが変わっていくところがあったのではないかと思います。 私達は大阪出身でこちらに頼れる人がいません。ですから、とにかく夫婦二人で協力して補い合って暮らしていくしかなかったという状況も今につながっていると思います。

 私の家は夫が何で自分でやります。これは私が働く前からです。夫の意識に男はこう、女はこう、というものはありません。これは夫の母が昔でいう、職業婦人でずっと働いていたことも関係していると思います。 このような環境で育ったので、夫は違和感もなく家事をやります。洗濯だけは自分の着るものが無くなればやりますが、アイロンも自分でかけています。

<最後に>

司会:高齢化社会の要因ともひとつに少子化が挙げられます。先ほどの二井矢さんのお話にもあったように、結婚しなていなくても子供を育てていけるという女性も多いのではないでしょうか。しかし、結婚していてお互いに働くことによって高めあっていく面もあると思います。

 ただ、仕事と子育ての両立というのはなかなか難しく、共働きだと子供をひとり育てるのが精一杯になります。こうしたことから、少子化は進んでいるとも考えられます。

 最後にお二人から、後に続く後輩女性に対して一言アドバイスをお願いします。

二井矢:「仕事を辞めないでほしい」ということです。結婚したり子供が出来ると、大変になりますがやはり仕事は辞めないでほしいと思います。

杉本:仕事をするにあたって、男性女性、高齢者やハンデのある人でも「出来る時に出来ることを」というおおらかな働き方があってもいいのではないかと思います。 私たちの活動もNPO法の成立により経済的に自立の方向へ進んでいます。この地域に安心して住めて、福祉も含めて、豊かな地域を造っていけたらと思います。

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