私は一才頃多摩市に引っ越して来ました。以来ずっと多摩市で暮らしています。ですから多摩に対して何か思ったり考えたりすることなど最近までは、ほとんどありませんでした。私にとって多摩は「何となく」住んでいる所であって別に好き好んで住んでいる所では無かったのです。
ある日道を歩っていると車椅子に乗った人とすれ違いました。別に何ということはない、私にとっては普通の光景でした。しかしふと思ったのです。
「多摩市には坂が多いのにどうして車椅子の人や障がいを抱えた人が多く住んでいるのだろう?」
考えて見れば多摩市を出てもここ程多く車椅子の人を見る所は無いような気がしたのです。買い物に行く時も登下校中にも大抵そうした人達を見るのです。しかし多摩は丘陵地帯を切り開いて作った“ニュータウン”なので、お世辞にも平らだとは言えないような山坂ばかりの道が何処に行くにもあるのです。不思議に思った私は早速家に帰ってから母に尋ねました。
母は多摩に引っ越してきてとても住みやすい所だと感じたと、言いました。幼い私をベビーカーに乗せて歩くのに何処でもスロープがついていたりして歩きやすかったそうです。ベビーカーに優しいということは車椅子にも優しい街だということじゃないのか、と母は話をしめくくりました。
街を歩けば至る所に盲人者用信号や点字版などがあります。スロープや駅のエレベーター、そして道はばが広いこと、これらはもしかしたら体に何らかの障がいを抱えている方にとって「住みやすい」と感じられる街の条件の一つかもしれないのです。そう思うと多摩は誰からも愛される街なのかな、と感じて私は少しうれしくなりました。
今、多摩市はどんどん変わっていっています。影では「オールドタウン」などとささやかれ、周囲に出来た新しい街に移り住む人も多くなっています。でも私は、例え「オールドタウン」でも悪くはない、と思うのです。
公園にある木は年ごとに太くたくましくなっていきます。私が引っ越してきた頃支えを必要としていた木はもう子供が登った位で枝が折れるようなか弱い木ではありません。それは「オールドタウン」になっていけばいく程出てくる「味」でもあると思うのです。確かに問題点も多いとニュースや新聞でも見聞きします。しかし「オールド」には「オールド」の良い所だってあるのは確かです。
これからも多摩市はどんどん変わっていくことでしょう。でもその時に緑が多く、また障がい者の方々にも優しい街であり続けて欲しいと思っています。私がこれからも多摩に住んでいて良かったと言える為にも。