1.日時 4月15日(土) 10時〜12時
2.場所 中央大学総合政策学部11号棟西館2階
          11240コンファレンスルーム
3.テーマ1:多摩タワー構想
  講師: 産業人文学研究所 佐藤靖之代表
  内容:(地上波デジタル放送の効果、通信と放送の融合、大容量ファイバー
      の地域での活用、防災無線等の新しい活用策)

テーマ2:「与論島の情報化への取り組みと新しい技術応用」
   講師:IIJメディアコミュニケーションズ 植田佳樹
   内容:・(リサイクルと情報化の両立、家庭のパソコンとISDNの利用)
     ・(IPマルチキャスト技術の活用)
       島内の情報をリアルタイムで発信「カメの産卵中継」計画
     ・(xDSL技術の活用検討)

テーマ1 第2東京タワー問題とは
地上波放送のデジタル化にともない現東京タワーに、デジタル用アンテナを取り付けるスペースが確保できないので、第2の東京タワーを建設しなければならない。というのが第2東京タワー問題である。
多摩タワー構想の特徴は、多摩丘陵に建設(標高+タワー高=507m)することで建設コストを抑えることが可能であること。タワー自体は機能的なマルチメディアタワーを目指しており、展望台などな考慮していない。つまり、放送と通信事業者の利用料のみで採算性を追求できることが条件。
都心に位置する各放送局からタワーまで番組を光り伝送するために、高品質の光回線を敷設する必要がある。この光回線の放送事業者専用使用部以外を、東京都と基礎的自治体を結ぶ自治体イントラネットへ発展させることやさらに地域社会へ開放するインフラとしての可能性を秘めている。
 
東京の隠れた可能性について
わが国の映像ソフト産業(約2兆円/平成4年度)における地上波テレビは市場の80%を占めている。また、映像ソフト制作会社の所在地として、東京都に約70%の企業が集中している。2010年までの映像ソフト産業の成長予測において東京の占める金額は約1兆7千億円増と見込まれているなど、東京は世界に類をみない「映像情報都市」である。
 
地上波デジタル放送の特徴
地上波デジタル放送とはどのようなものか?毎日視聴する通常番組は、生活様式を根本から変えるものではない。しかし、地上波デジタル・データ放送と呼ばれる、いわば通信と考えて良い機能が大きな可能性を秘めている。
デジタル放送を受信する仕組みにはSTB(セット・トップ・ボックス)と呼ばれる記憶装置(ホームサーバー)を利用する。このSTBは家庭内の大容量記憶装置で、インターネットと連動して学習やショッピングをするために必要な情報を、放送波を使って家庭へ送り届ける際の蓄積や、通常番組の蓄積もできるものである。このデジタルデータ放送とインターネットの連動が、生活様式を大きく変えてゆくと考えられている。
 
多摩・産業形成のための構成要素
情報を基本とする産業形成を考えるとき、高速道路を走るクルマをアナロジーとして考えることができる。
スーパーハイウエイを走るクルマは、エンジンとドライバーとエネルギーが必要となる。多摩にはエンジンに相当する大学機関が57大学、その中でも映像ソフトの牽引力として期待される美術系大学が3大学(学部も含めるとさらに)。ドライバーとして学生が21万人、大学教員・留学生がそれぞれ数万人。情報通信関連企業OBが多数居住しているというまれにみる好条件を備えている。あとは、エネルギーとして何を選択するか。エンターテインメント・ゲーム・アニメ・教育・福祉介護など。
 
地域社会の基盤となるプラットホーム事業の形成
東京及び多摩地域の好条件を生かして、プラットホーム事業を形成する事を考える必要がある。
地域社会には様々なセグメントがあり、ニーズの単位が小さいくそれぞれの活動を軌道に乗せてゆくには大変な努力が求められる。地域社会における情報基盤整備のあり方の一つとして、地域社会の新しい参加者が情報通信を利用する際のハードルを限りなく低くすること、あるいは取り去ってしまうことである。ここに新しい仕組みの情報基盤を取り組むこと。
 
 新しい情報基盤は利用者本位主義で決定を
 第2東京タワーの立地は、放送事業者の技術的検討を経て決定される見通しである。
 タワー自体の利用者は放送事業者、通信事業者である。
 しかし、最終的な利用者は一般視聴者であり通信のエンドユーザである。多摩地区は 約400万人の人口集積地であり、東京全体では1200万人の人口を擁している。
 さらに昼間都民対策で指摘されているように、東京都心には平日日中に約300万人の通勤通学買い物の人々が外出している。
 通常番組の視聴もさることながら、災害対策、地域社会のニーズなどから高度情報通 信社会の情報基盤整備を進めてゆきたいものである。

テーマ2:「与論島の情報化への取り組みと新しい技術応用」
 講師:IIJメディアコミュニケーションズ 植田佳樹
 内容:・(リサイクルと情報化の両立、家庭のパソコンとISDNの利用)
    ・(IPマルチキャスト技術の活用)
      島内の情報をリアルタイムで発信「カメの産卵中継」計画
    ・(xDSL技術の活用検討)
 今あるリソースを活用して価値ある情報発信−与論島の情報化への取組み
 1.与論島の活動概要
  鹿児島県の最南端で沖縄から北28kmに位置する、自然豊かな小さな島。
 住民の地域活動が活発で、民間団体「与論健康村」が中心となって情報化
 を推進している。
  与論島には都市機能の中で失なわれた、豊かな自然や地域社会、生活
 習慣などかけがえのないなものが多く残っており、
 1)こうした価値ある情報を広く発信すること
 2)島内の方がインターネットを活用して自由に島外とコミュニケーションを
  とれることを目的に活動している。また、島外の専門家と共同で取り組むこと
 により、島内の人的リソースを補完している。
  今あるリソースを有効に活用して段階的に情報化を推進し、将来は自然
 に恵まれた環境の中でのソフトウエア産業の起業を目指している。
 
 2.活動内容
 (1)いらなくなったパソコンを利用した「パソコン教室」
  経理学校の一室を使ってパソコン教室を開講。機材は企業や個人で使
 わなくなったパソコンを使用して数万円の予算で整えた。講師はパソコン
 を使える人が共同で教えている。
  気軽に参加できると好評で、身近に使える、触れる環境を作ることが情報
 化の推進にはもっとも大切な要素であることを改めて認識させられる。
 
 (2)島外から専門知識を吸収「遠隔パソコン講座」
  圧縮技術の向上やISDNの普及により、映像や音の伝送が容易になって
 いる。またウインドウズにはテレビ電話ソフトも標準で添付されており、簡単
 に使うことができる。与論ではこうした機能を活用して広く島外から技術を
 修得するために、パソコンの遠隔講習を試みている。
 
 (3)島内の情報をリアルタイムで発信「ウミガメの産卵中継」
  島の豊かな自然と社会を広く社会に発信するために、インターネットでの
 リアルタイムな情報発信を計画している。自然をありのまま残すことの大切
 さを知ってもらおうと今年の5月にはウミガメの産卵中継を予定している。

(4)新しい技術を活用した島内ネットワークの検討
与論ではほとんどの方が慣習的に自宅で亡くなる。これは死生感の育成や家族・親族の絆を深めるといった大きな意味がある。
こうした在宅でのターミナルケアを実現するために、既存の電話線を利用して
高帯域の通信を行える「xDSL」等で島内ネットワークができないか、勉強会を開き検討している。「xDSL」は信号の減衰が大きく伝送距離に制限があるが、小さな与論島にはぴったりの手法であり、実現すれば光ケーブルを引かなくとも数Mbpsの島内ネットワークが実現する。 民間団体の力で実現可能かどうかは別として、こういったアイデアは他の地域でも参考になるのではないだろうか。 

  3.与論島の活動から学ぶもの
  与論島の活動は現在あるインフラでの可能性を示している。 また、豊か
 な自然と社会の中には現代社会の持つ様々な問題を解決するヒントがある。
  現在は経済的な見地から都市中心に通信インフラが整備されているが、
 日本の各地が多用な情報を発信できる通信環境を整えることは、私達
 都市住民にとっても大きな恩恵があることを与論島の活動は教えてくれる。


☆☆☆☆☆  多摩ニュータウン学会スマートグロス部会
 情報インフラタスクフォース 事務局 高橋俊彦 Toshihiko Takahashi 
 tosichan@nifty.com(new private ID),tosichan@mb.infoweb.ne.jp(old)
Tel/Fax 042-374-7086(Mobile 070-5553-2622) 
メーリングリスト  smart-infra@tama-nt.org
入会申込は多摩ニュータウン学会 URL  http://www.tama-nt.org/ ☆☆☆☆☆