1999年度活動報告

 

まちづくり部会研究活動計画(案)

理事 高田一夫、田中慎一

 

1.まちづくり部会の研究内容

多摩ニュータウンは事業開始から30年が過ぎ、開発は仕上げの段階となりつつある。この長き事業期間において社会・経済は大きく変化し、最近では自治体の財政難や行政改革の風潮から、開発当初の理想や計画の意図するところを安易に切り捨て、開発主体の今日的な財政の悪化を理由に、保有地の性急な処分が計画されるなど、仕上げの時期にふさわしくない動きも見られる。さらに、住都公団の改組と分譲住宅からの撤退、ニュータウン事業の平成12年度概成等により、事業期間の終了に伴って開発エリアは関係各市の管理となり、ニュータウンとしてのまとまりや一体性が損なわれる懸念が予想される。まちづくり部会は、このような時期に多摩ニュータウンの過去から現在を問い直し、そして、未来へと繋がるまちづくりに関する事項を多方面から研究・調査し提言していきたい。

2.98年度の研究実績

98年度は、学会の年間研究テーマ「つくられた街・多摩ニュータウンのライフコース」を受けて、まちづくり部会が第4回研究会を担当、会員が今後の研究を進める上で共通の問題認識を持つことができるよう共通の基盤を提供することを目的に、以下に示すテーマで、ニュータウンに関する基礎的事項を調査・研究し、発表した。

1)少子化・高齢化の統計分析            発表者;寿崎かすみ

98年度の第1回、第3回研究会のテーマを受けて、多摩市などの統計データを基に実態分析を試みた。基礎的統計データの分析を中心に、今後の多摩ニュータウンにおける少子高齢化を考える上での足掛かりとなることがねらいで、来年度以降への研究展開に道を開いた。

2)ニュータウン開発における都市計画法制との関わり  発表者;田中慎一

多摩ニュータウンの計画、開発にあたっては、都市計画法や新住宅市街地開発法、土地区画整理法などのまちづくり関係法令が複雑に関連しあっており、なかなか理解が困難である。このまちづくりの仕組みを分りやすくひも解き、今後のまちづくりを考えていく上での基礎的事項として整理した。

3)東京都及び4市の計画における多摩ニュータウンの位置付けと問題点
                           発表者;高田一夫

東京都の基本計画である生活都市東京構想及び関連計画における多摩ニュータウンの位置付けを明らかにし、併せてニュータウン関係各市の基本構想、基本計画、都市計画マスタープランの策定状況や内容などを調査し、各市におけるそれぞれの問題点を明らかにした。

4)多摩ニュータウンのデータベース構築と歴史的視点からのアプローチ
                           発表者;勝村誠

多摩ニュータウン建設の過程や既存地域の変容ぶりを南多摩地域の歴史のなかに位置付け、政策史的に検討、検証していくための基本的視点の試案を提案、これからのまちづくり、地域づくりの基礎資源となるデータベース構築の方法について、基本的文献を収集し展望した。

 

3.99年度の研活動計画

99年度は、前年度に引き続き会員が今後の研究を進める上での共通の問題認識を持つことができるよう、共通の基盤を提供することを目的に、各開発主体の保有土地の処分状況、処分計画、新住宅市街地開発事業会計始め各会計の収支計画、決算、第三セクターの事務事業実態等多摩ニュータウン開発に関連する基礎的事項を調査・研究するとともに、部会に相互独立した以下のような専門研究班を設置して幅広い活動を行っていきたい。

 

1)緑と清流班

人工河川化した多摩ニュータウンの母なる川、大栗川水系(三沢川を含む)を自然豊かな河川に再生させ、住民が生き物と親しめる水辺の拡大を図る方策を研究、併せて流域における樹林地の保全、緑化の推進など流域環境を総合的に保全・創造していくための実態調査と基礎的研究をする。

 

2)広域行政班

4市にまたがる多摩ニュータウンを在住・在勤者の立場から、行政サービスの広域的供給にむけたしくみづくり、すなわち、市町村合併や広域連合等の制度を研究、併せて全国各地の実際に合併や広域システムを推し進めている事例を調査、合併や広域連合設立の背景・経緯・問題点について研究する。

 

3)少子高齢班

98年度、多摩市などの統計データを基に多摩ニュータウンにおける少子高齢化の実態分析を行ったが、今年度は前年度調査でできなかった部分や、研究会での質議で問題になったところを補足調査し、併せて実態分析をふまえて、学校統廃合など多摩ニュータウンにおける少子高齢化のもたらす問題点を研究、人口構成に見合った社会を創造するための方策について研究する。

 

4)安全安心班

高齢者、障害者、幼児を始め多摩ニュータウンに在住・在勤する全ての人が、安全で安心して暮らし働けることのできるまちにするため、手始めにウォッチングを兼ねてまちを点検、問題点をとりまとめ、行政を始め各方面へ提案、改善していく。併せて災害を防ぎ、災害に対処していける安全・安心のまちづくりのための方策について調査研究する。

 

5)データベース班

ニュータウンに関するあらゆる情報(文献、メディアその他)を収集、整理して、学会のホームページに掲載するなどして、多摩ニュータウン研究の円滑な推進に貢献する。

部会は毎月1回程度定例会を開催、各専門研究班の調査研究進捗状況について意見交換し、研究大会、研究会での発表を目標に研究を進める予定である。

 

4.部会員の募集および連絡先

まちづくり部会では,まちづくりに関心のある部会員を募集いたします。氏名、住所、電話番号、メールアドレスおよび関心のある分野などを記入し下記へご連絡ください。

田中 慎一〒192-0363 八王子市別所2-13-5-405

               E-Mail dn8s-tnk@asahi-net.or.jp