第3回研究会(平成13年度)

情報ネットワーク部会主催


 平成14年1月14日(月)13〜16時、たまヴァンサンかん2階会議室において、第3回研究会が「私たちの街の情報ネットワーク化に向けて」と言うテーマで、情報ネットワーク部会主催により開催されました。

 成人の日にも係らず44名(会員21名、一般23名)の多くな参加者が有り、時代に即したテーマへの関心の深さを伺わせました。

 第1部 基調講演では、「京王線沿線の光ネットワークについて」と言うテーマで経緯と将来展望を京王ネットワークコミューニケーション横山取締役より話して頂きました。
 第2部 パネル討論では、基調講演者に多摩市役所、NTT、市民代表を加えて「私たちの街の情報ネットワーク化に向けて」コーディネータ中央大学総合政策学部細野教授により、情報化社会の進展の中で情報ネットワークの孤島にならないよう、何をすべきか活発な討議が行われました。当日の概要を次に示します。

 

第3回研究会(情報ネットワーク部会主催)プログラム

日時: 平成14年1月14日(祝)13:00〜16:00
場所: たまヴァンサンかん 2階会議室 (多摩センター駅前、三越東側)
テーマ: 私達の街の情報ネットワーク化に向けて

第1部 13:00〜14:00 基調講演 「京王線沿線の光ネットワークについて」
 講演者:(株)京王ネットワークコミュニケーションズ
     取締役管理部長 横山 敏之

第2部 14:10〜16:00 パネルデスカッション 「私達の街の情報ネットワーク化に向けて」
 パネリスト:
  (1)(株)京王ネットワークコミュニケーションズ
     取締役管理部長 横山 敏之 (光ネットワーク施設者として)
  (2) 多摩市政策推進部
     IT推進担当課長 加藤由紀子 (自治体の情報ネットワーク化)
  (3) 東日本電信電話(株)東京支店 光・IPサービス担当
     営業担当部長  内山 修 (ネットワークサービス提供者として)
  (4) 東京都立大学大学院 都市科学研究科 修士課程  
             高橋 俊彦 (ネットワーク利用者として)
 コーディネーター:
     中央大学総合政策学部教授 細野 助博

司会: 情報ネットワーク部会幹事 寺嶌 敏雄

第1部 基調講演 「京王線沿線の光ネットワークについて」
     (株)京王ネットワークコミュニケーションズ 取締役管理部長 横山 敏之

資料「京王グループと情報通信事業について」に沿って話しが進められた。

 先ず、京王グループの事業概況の紹介が他の私鉄と比較しながら行われた。京王グループは36社からなり、2000年度連結売上高4,216億円で、その構成は運輸業(28.8%)、流通業(42.3%)、レジャー・サービス業(19.7%)、不動産業(4.0%)、その他(5.2%)である。ここ10年連結売上高は横這いで有る。新宿から始まる東京西部一帯を基盤に、生活総合産業を目指して、多角的な事業を展開、「今日もひとつ新しいこと―京王グループ」の合言葉のもと堅実な経営を行っている。他の私鉄と較べて見ると、小ぢんまりしているが経常利益では遜色のない経営をしている。
 同業他社の事例では、各社独自の情報通信ビジネスに取り組んでいる。80年代から東急、東武、小田急、相鉄など他の私鉄はCATVを沿線に進めているが、京王は現在手掛けていない。

 京王グループでは企業環境の変化、自社の経営資源・商圏・サービス・顧客を考慮し、マーケットの質的拡大と沿線価値の向上を目指して、通信事業を立ち上げる事にした。母体の京王電鉄は光ケーブルの投資をし、自体で鉄道の運行管理に利用するとともに、通信事業に光ケーブルの芯線を貸し出す。新たに京王ネットワークコミュニケーションズを2001年4月2日に設立、第一種電気通信事業者として光ケーブルをベースにした沿線のインフラを活用して付加価値サービスを提供する事にした。当面法人向けの専用回線サービスが中心である。提供するサービスは、エキスプレスイーササービス(10M、100M、1GのP to P型)、ATMサービス(45M〜150M、600M)、超高速デジタル専用線(45M、150M、600M)で、法人に適したサービスである。個人向けサービス、コンテンツサービスは現在考えていない。サービス提供地域は東京都、神奈川県の京王沿線周辺地域をターゲットにしている。

 課題は、インフラの投資のタイミングと独自の営業展開。既存通信事業者との競合よりは、鉄道事業を母体とした京王ならではの新興通信業者を目指したい。

第2部 パネルディスカッション 「私達の街の情報ネットワーク化に向けて」

コーディネーター
  中央大学総合政策学部 教授 細野 助博

 先ず多摩地域の現況紹介で、「学術・文化・産業ネットワーク多摩準備会」を中心とするまちづくり実行委員会の活動として、文部科学省「生涯学習まちづくりモデル支援事業」に応募しているいる。実施組織はまちづくり支援と生涯学習の2つのワーキンググループで、そこでは多摩準備会幹事機関と会員の自治体・大学・企業・NPOが一体になって、まちづくりプログラムや大学連続講座などの基本企画事業と、参加する自治体が計画する個別企画事業が計画されている。この準備会は、7月に正式発足する事にしている。「学術・文化・産業ネットワーク多摩」は多摩地域の活性化を目指した壮大な事業である。

パネリスト
  
討論に先立ち各パネリストから、まずそれぞれの立場のコメントがあった。(発表順に掲載)

(1)東京都立大学大学院 都市科学研究科 修士課程
     高橋 俊彦 (ネットワーク利用者として)

 昨年から本年に掛けADSLの普及、1月よりBフレッツ(FTTH)の開始で多摩地区のブロードバンド環境は大きく改善され、また今後益々充実することが窺える。これは画像サービスが上り下り高速に出来、遠隔TV会議が何処ででも出来ることになる。これからの課題は、これらのインフラを如何に活用するかである。地域(社会)情報化の観点からは全体的かさ上げが重要であり、最も遅れたセクター、即ち、議会、市役所、及び学校での活用を強力に推進する必要がある。例えば、ブロードバンドサービスの活用で議会中継、議事録公開などは迅速簡単且つ低コストで可能になり、政治への市民参加は大きく前進するであろう。また調べごとは全てインターネットを通して出来る。

(2) 多摩市政策推進部  IT推進担当課長
     加藤由紀子 (自冶体の情報ネットワーク化)

 行政としてのインターネットの活用は2つの切り口がある。1つはe-japanと連携した行政の効率化、そして他方は市民サービスの向上である。そこで、多摩市では昨年第4次総合計画を策定、ISO9001を取得して“行政コストを削減し市民の満足度向上”を目標に進めている。 これらは一般に電子政府(電子市役所)などと呼ばれる概念である。24H、365日インターネットで電子申請、電子届出、手数料の支払など市民のニーズに合わせて実現して行きたい。
 現在、多摩市役所の進捗は議論段階で、具体的内容はまだ決まって無い。先ずは、職員の意識改革が重要と考えている。

(3)東日本電信電話(株)東京支店  営業担当部長
     内山 修 (ネットワークサービス提供者として)

 NTTは電話でユニバーサルサービスを提供し、電話などの通信料金が収入のメインである。しかし新しい時代に即したISPは、制約が課せられているが、グループ全体で取り組んでいる。通信事業者として、サービスを必要とする所まで届ける口を用意している。フレッツシリーでは、ISDN、ADSL、BBの3種類のサービスを提供している。急速に価格が下がり、サービス地域を拡大している。
 多摩、八王子地区で始まる(1/21開始)Bフレッツ(光ファイバー)は4つのタイプ(ビジネス、ベーシック、ファミリー、マンション)があり、最大100Mbpsの超高速・大容量を定額料金で提供する。多摩ニュータウンでは2/3以上が集合住宅であるので、マンションタイプでの対応となろう。この場合、問題は共通設備の設置場所の確保である。そのためには物理的空間の確保及び管理組合の合意が必要である。.
 Bフレッツは新たに光ファイバーを引くので、ADSLでの距離制限問題をクリアーでき、又、対称型送受信のためサーバー向きである。一方、ADSLは非対称型のためクライアント利用向きである。これはユニバーサルサービスではないので、投資に見合った回収の見込まれる所から実施して行く。
 都市整備公団のマンションタイプはKDDIと組んで、若葉台で施行する。

(4)(株)京王ネットワークコミュニケーションズ 取締役管理部長
     横山 敏之 (光ネットワーク施設者として)

(基調講演補足) 個人サービスは、NTTと同じことをしても勝負が見えているので現状では想定していない。鉄道との組み合わせでインフラを整備し、総合的なサービスを提供する。

討論

  細野:

京王さんは情報サービスとして何か考えているのか?

  横山:

個々の人へ回線を引く商売はやらない。鉄道としての流通と抱き合わせの中での、総合インフラとしてのサービスをやっていく。

  細野:

ダークファイバ―を借りて大学間を結ぶのに、4億も5億もお金がかかる。どこがお金を出すか?SOHO事業、生涯学習など、夢は描けるがお金が出てこない。総務省、経済産業省などお役所の縦割りのせいももある。

  会場A:

東京メタリックと組んでADSLを引いたが、ソフトバンクに吸収されてしまった。しかし、地域のADSL化の推進を果たした。京王さんについて、駅を中心にしたもの、例えば駅の保育所などがある。また、八王子南部に住んでいるが、多摩市の方が近いので、多摩市にも八王子市の情報の広域共有をしたらどうか。駅単位で情報発信して欲しい。

  横山:

京王は4月から調布(つつじヶ丘駅)と府中(府中駅)、渋谷区のポピンズコーポレーションと共同で始める。駅を情報発信基地にする事は現状では考えていない。

  加藤:

行政の境界を越えた情報、行政サービスの相互乗り入れは、先ず多摩市と稲城市、日野市で図書館の相互利用を4月1日から始める。生活環境に関しては、多摩センターを広域行政サービスの拠点にしたい。

  細野:

多摩センターにどうやって人を集めるかだが、行政サービスセンターとしての多摩センターというのもある。

  内山:

高速回線で生活がどう変わるか、である。NTTは他社と比べて高めの価格だが、そのうちに安くなる。早いスピードで、時間がお金を生む。
ADSLはサーバーには向かない。またプロジェクターを使って動画を大きな画面で見るためには、最低10Mbp必要である。

  会場B:

都知事の目は都心に向いている。議員の数の違いもある。多摩というと里山とか奥多摩の緑の話になってしまう。事業が良ければお金は出てくるが、包括的な計画、街作りの予算がいる。上手にやっていきたい。

  会場C:

長野県では、国やNTTの光ファイバーと地元のCATV、有線放送を相互接続し県全体を網羅するブロードバンドネットワークを構築しようとしている。既存通信網の活用でほとんど県の負担なしにインフラの整備ができ、他の地域のモデルなりそうである。多摩地域では、できないか?

  内山:

長野県はニュ−メディア時代から長くやっていて、蓄積があり、常に先進的な事に取り組んでいる。

  高橋:

CATV会社は多摩地域の各市にある。これを京王の光ケーブルで結んで経済的に地域網を構築し、低額でネットを利用できるようになる。ネットワーク多摩での大学間接続も比較的安くでき上がるのではないか。

  内山:

NTTのBフレッツでも可能である。プロバイダーへの切り口もあり地域網の役割を果たす。

  加藤:

多摩TVの出資比率が都市整備公団、東京都、多摩市の順で、多摩市の意向がなかなか通らない。

  会場D:

豊ヶ丘は情報ネットに関しては陸の孤島である。ADSLをどのプロバイダーに申し込んでも駄目であった。何とかならないか?

  内山:

NTTのBフレッツで対応できる。2002年度のニュータウン地域でのカバー率は94%を目標にしている。集合住宅では共通機器を共用スペースに設置するのに、住民の3/4の賛成が必要であったが法改正により1/2以上に改正され、導入されやすくなった。
韓国では、新築マンションは通信設備用の場所を設けないと建築できない。

  細野:

日本は30年しか保たない住宅、外国に比べストックが少ない。住宅政策は?

  加藤:

多摩ニュータウンの新住地区の建物は、政策によって作られたが、多摩市の集合住宅の人口が減っている。人が市外へ流出している。古い住宅の建て替えで、インターネット環境を整備して、SOHOや学生さんを増やすのは、市営住宅は可能だが、他は難しい。コミュニティとしての場が地域の魅力になるには、例えばCATVの多摩テレビは都市整備公団の子会社、であり、都も出資しているが、実際の決定権は多摩市には無いため、市の思い、市民の思いとのギャップが大きい。

  高橋:

教育関係の集まりで、三鷹市側は500人中、市民が200人も参加していて、びっくりした。多摩市側は、昨年11月の東落合小の研究発表会で100人集まったが、市民はたったの1人しかいなかった。総合学習が4月から始まる。先生方は市民の手を借りたがっている。
現在、イントラ・バケッツ(三鷹市にセンターのある全国規模の学校インターネット3のアプリ)の実験が進んでおり、多摩市、八王子市、稲城市のモデル校から情報発信や受信できる様になっている。この活用が課題である。街づくりと同様、教育面でも市民参加が求められている。

  会場E:

一般市民を対象にした生涯学習も大事にして欲しい。

  会場F:

これからは、情報インフラは従来の橋や道路のような公共財考え、目標を持って整備すべきではないか?

  細野:

まだまだ議論が尽きないが、残念ながら時間が無くなったので情報インフラについての研究会を終る。今後ネットワーク多摩で具体化を検討していきたい。

                                     文責:寺嶌 敏雄