女性の就労問題(ゆづり葉 杉本依子さん)

炭谷(事務局):今回は、女性達が就労際にどのような問題を抱えているのかを研究会のテーマとして取り上げたいと思います。ただ,今日の「女性の就労問題」というテーマから家事労働が落ちていますが,一回の研究会では時間も限られているので、企業に勤めて就労されている方と新しいビジネスをネットワークを使って起こしている方のお話から女性の就労の問題を取り上げていきたいと思います。

 そういった意味では,限られたものになりますが,その問題を糸口として,女性の抱ている問題がどのようなものなのか,ひいては男性はどうあらねばならぬのかというところまで議論が及ぶかもしれません。この問題について2時間ほど考えたいと思います。

 研究会終了後男性会員,非会員の方も含めて自由に話し合う場を設けてありますのでそちらにもご参加下さい。

 それでは今回の司会をして下さいます,岩佐さんです。お願いします。

岩佐さん(以下敬称略):本日司会を努めさせていただきます、稲城市の会員の岩佐と申します。

 それでは,今日お話しして下さるお二人をご紹介いたします。私のお隣が市民事業でハンディキャブの「ゆづり葉」を事務局長として運営していらっしゃる杉本さんです。そのお隣がベネッセコーポーレーションのサプライ推進室にお勤めの二井矢さんです。

 前半1時間を私達3人が頂いていますので,その後の1時間でみなさんの質問や,ご意見を聞く時間に当てたいと思います。 それでは,おひとり15分ほどでご自分が今どのようなお仕事をされているのか,

それはどのようなきっかけだったのか,仕事の仲間,スタッフ等について、具体的にお仕事のイメージができるようにお話をしていただきたいと思います。

では,「ゆづり葉」の杉本さんからお願いします。

 

杉本さん(以下敬称略):杉本です。私は、いつも「ハンディキャブゆづり葉の杉本」と自己紹介させていただきます。

<市民事業とは>

 ハンディキャブゆづり葉を一言でいいますと「非営利で移送サービスをしている市民事業」のことです。ここ数年市民事業が注目されています。これは企業でもなく行政でもなく営利を目的としない事業のことです。

 アメリカのNPO,イギリスのグランドワークに当てはまります。 日本でもパートではなくて目的を持って地域に根ざした働き方がしたいという人が「ワーカーズコレクティブ」という団体を神奈川で始めました。

「ワーカーズ・コレクティブ」とは、誰もが同じ立場で出資し運営する働き方です。東京では現在福祉のワーカーズ・コレクティブとして、8区19市32団体が「たすけあいワーカーズ」として活動しています。

 多摩市にも「ワーカーズコレクティブつむぎ」という団体がありますが、私個人もその会員でもあります。

<ゆづり葉の誕生のきっかけ>

 数年前から街づくりの機能の一つとして今後福祉の分野で行政のパートナー的な存在として,市民事業が必要とされています。私たちも「街づくりにはどのような機能が必要か」,「私たちはどのようなことができるのか」を考えてきました。

 2年ほど前,たまたま世田谷の方で不要になった移送サービスを行えるハンディキャブがあるのでそれを使って「つむぎ」でも,このサービスをしてみようということになり,購入しました。

 そのときは多摩市でも市の委託で,「社会福祉協議会」が83年から行っている「多摩市在宅重度身体障害介護ガイドヘルパー派遣事業」がありまして,その中の一つのとして、移送サービスも行われていました。しかし,そのサービスは重度障害1,2級の方しか利用できません。

<「つむぎ」と「ゆづり葉」>

 「つむぎ」自体は5年ほど「家事援助サービス」を行っていました。このサービスは需要が非常に多く、それに対応するだけで精一杯でした。

 このような状態では「つむぎ」でもう一つサービスを行うことは難しく,新たに団体を作りそこで市民事業として始めようということになりました。それが「ゆづり葉」です。

 また,この事業の計画が動き出した頃,私は仕事を辞めた時期でした。仕事を辞めたのは「ただ働くのではなく、もっと地域に密着した形で,特に福祉に関係した分野で働きたい」と,漠然とではありましたが、考えるようになったためでした。

<ハンディキャブ[ゆづり葉]設立に向けて>

 私は市民事業の”概念”は頭の中に入っていたのですが,実際にどのように事業を起こしていけばいいのか,どの様に運営していくのかなど知識,”ノウハウ”等は全くありませんでした。

 そこで,ノウハウを勉強するために,世田谷の「世田谷ミニキャブ区民の会」で17年のキャリアを持っている移送サービス団体にうががいました。この団体は,市民事業の移送サービス分野の草分け的な存在です。

 そこでは17年間培ってきた,事業のノウハウから資料まで何でも教えて下さいました。また,世田谷には2年前の時点で7つの移送サービス団体があり,それぞれの特色や,17年間の中で生じてきた問題点なども教わりました。

 その問題点とは,まず,運営側が高齢になってきたことが挙げられます。私が伺った団体でも事務局の方が高齢の方が多くシルバー人材派遣で来ているのかなと思いました。それともう一つの問題は需要が非常に多く,それに対応するのが精一杯でサービスの内容を考えている暇がなく,タクシーのように利用者を目的地から目的地までただ運ぶだけになっているとのことでした。

 そのことが,移送サービスをどのようなスタンスでやっていくのか考えるきっかけになりました。

 この訪問の最後に向こうの方が「このような移送サービスが多摩でも、できるのは本当にうれしい。多摩にもこのサービスを必要としている人はたくさんいます。頑張て下さい。」といって下さいました。このとき私は移送サービスを始める決心がついていなかったのですが,この言葉を聞いてやらなければと決心しました。

 それから設立へ向けて本格的に動き出しました。まず,最初にメンバーを集めようということで,まわりの運転ができる時間が自由になるといった友人に声をかけました。 8月に私が運営のことを勉強し始めて,10月にメンバーの初顔合わせがありました。これはここだけのお話ですが,それまでは電話だけの連絡で実際に会ったら私が思っていた人とは違って,人違いだったという人もいました。このように会うのも初めてというメンバーも多い中で,準備にかかりました。 

 その後,会則を作ったり,サービスについて勉強して,自分たちのスタンス作り,団体見学をして,昨年97年4月に設立総会を開催することができました。この総会は当初のメンバーが一人も欠けることなく迎えることができました。設立から1年間はこの12人が運営委員として活動しました。

<ゆづり葉について>

 お手元のパンフレットでゆづり葉のことを紹介します。
ゆづり葉は完全会員制になっています。いまの法律では不特定多数を対象としたサービスを行うと,「白タク営業」になってしまうのでこのような形をとっています。

新聞などでも報道されていますが,今,この法律を改正する動きが出てきています。 現在,ゆづり葉の会員は110名です。会員は運転会員,利用会員と区別せずに,全員正会員となっています。入会時に運転,利用,スタッフというように登録するようなシステムになっています。

 会員の内訳は利用登録が40名,家族の介護,付き添いのために利用登録されている方が10名,運転登録が35名,その他,これは賛助会員となっていただいている方が25名となっています。

 登録については,これはいつでも変更できるようになっていて,運転登録をしていたけれど,ぎっくり腰で歩けなくなったのでしばらく利用させて欲しいとの要請があり,利用登録もして利用された方も実際にいらっしゃいました。

 賛助会員の方には,精神面・資金面での援助をしていただいています。また,年会費を2000円以上とさせていただいています。

<運転スタッフについて>

 運転スタッフについて触れますと,35名のうち女性が22名です。そして40代までの方が6人,40代以上の方が16人となっています。比較的年齢層が高くなっていますが,これには理由があります。それは時間があって,お子さんにある程度手が掛からなくなっている方がいいということがあります。

 若いお母さんもお手伝いして下さるといって下さるのですが,前にお子さん連れで運転をお願いしたところ,利用者の方からクレームが来てしまいました。それと子供連れだと,どうしても安全性に問題があるのではないかということでこのような年齢構成になっています。

 運転スタッフには様々な方がいて,小学生のお母さんで午前中お手伝いして下さる方や60代の男性で遠出専門やスタッフの都合がどうしてもつかないときに代わって下さる方,20代の男性でフリーでお仕事をされていて時間に余裕のあるときに手伝って下さる方など色々です。

<サービス利用の経費>

 費用などについてですが,まず,年会費として4月から翌年の3月までの1年間で2000円となっています。これは移送サービスの傷害保険加入料などにあてさせていただいています。

 他に,利用に際して経費の負担をお願いしています。1時間ごと1000円,10km毎にガソリン代300円となっています。 この年会費と利用料では,運営が非常に厳しいのですが,将来自分たちが利用するときのことを考えて納得した金額でした。

 また運転スタッフに有償の費用が1時間750円となっています。これもまた,運側から考えると厳しいものがあるのですが,働くとしたらこれぐらいは保証したいということからこのようになりました。

<ゆづり葉の新しいサービス> 

 「ゆづり葉」では今年の2月から新しいサービスを始めました。
 それはただ目的地まで移送する、「Door To Door」のサービスだけでなく,着いた向こうでも一緒に付き添うサービスです。

 これは前からもサービスという形ではなく行われていたことなのです。運転していって,着いたとしても、高齢な方だけで駐車場から歩いてもうらうというのは待ってる方も心配で付いていってしまうことが多いので,それならばこれもサービスにしようということになりました。

以上が「ゆづり葉」の活動です。  

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