「コンピュータネットワークを通じた子育て支援の事業展開
〜電子メールで子育てネットワーク」
多摩市教育委員会社会教育課
鈴木久美子******************************************************************************
私は多摩市に住んで4年になります。家族は
夫と4歳の子どもがいまして、多摩ニュータウンの典型的な核家族で、少子化のモデル家庭ということになります。
私は仕事で家庭教育支援を担当していますので、今日は行政の立場からとひとりの母親としての立場から話をしたいと思います。
<家庭教育支援とは何か>
家庭教育支援事業とは簡単に言うと子育て支援ということになります。ただし、福祉とは違って、”親としてどのように子どもを育てていくのか”を親自身が考える環境を整えることを支援する事業です。この目的は、親を教育することで子どもをのびのび育てる環境をつくることにあります。具体的な事業活動をあげると、「家庭教育通信
のびのび育つ子 」を毎月9千部ほど刷って、多摩市内すべての保育園、幼稚園、小学校1、2年生の各家庭と、健康センターの乳幼児検診の受診者全員に配布しています。内容は子どもの心を育てる、子どもがのびのびと育つことができる環境をつくるための情報を載せています。今回は市内の保育園の園長先生に教育について原稿を書いていただいたり、公立の保育園内に子育てセンターがオープンしたという情報、各地域での民生児童委員による教育相談、また健康センターで行われる医師や看護婦による育児相談などの情報を載せ、これらの利用を広く呼びかけています。
<インターネットを使った子育て支援>
市の事業とは別に、私個人として、都内の社会教育に関わる職員の有志でつくっている研究会に参加しています。この研究会ではインターネットを使って子育て支援事業を行ったら、どのような効果があるのかを調べようとしています。
なぜ子育て支援にインターネットを使ったのかという理由ですが、それは多摩ニュータウンに住む母親達は横のつながりがなく悩みを相談できずにいる人が多いこと、そして働く母親達は平日の昼間にある子育て支援事業には参加できない、そこで時間にとらわれずに意見交換をし、ネットワークを作ることが出来るインターネットを利用することになったのです。
<多摩ニュータウンの母親達>
子どもを持った母親から「引っ越してきたばかりなので友達を作ろうと公園に行ったが誰もいなかった。これでは友達が出来ないので、市内で親子サークルを捜している。」とう電話を受けたことがありました。そこで、実際にどのような状態なのか取材しに行きました。その取材で私の持っていた多摩ニュータウンの公園のイメージが大きく変わりました。
私は多摩ニュータウンには公園が多いので、そこに行けば母親達がたくさんいて、友達が簡単に出来るのではないかというイメージを持っていました。しかし、取材で幾つかの公園をまわってみて分かったことは、公園にいる人は若いお母さん達よりもお年寄りたちの方が多いということでした。さらに、母親が多く集まっている公園では、5、6人のグループがすでに出来ていて他の人を寄せ付けない雰囲気を持っていました。実際に話を聞こうとしても子どもを連れていない私は仲間に入るのに抵抗を感じてしまって、結局、一緒に取材に行った市民の方に話を聞いてもらったという具合でした。
その取材では多摩センターの駅前にも行きました。丘の上プラザあたりではベビーカーを押した子ども連れの母親をたくさん見かけました。けれども、ほとんどの母親は自分と子どもだけで行動していて、仲間と一緒にいる人は見掛けませんでした。
このことは個人で行動する母親が多くなっていて、母親達のネットワークがなく、みんながばらばらになっていることを示しているのではないかと思います。
そこで、ネットワークを作る手段として公民館で集会を開きました。これはそれなりに成功でした。しかし、参加できる人が平日の昼間に時間のある人に限られます。こうした実際の経験の上でもインターネットの試験的な利用価値を見出したのです。
<メーリングリストを活用した支援>
このインターネット上の集まりは、メーリングリストを活用しています。メーリングリストとは
メーリングリスト宛てに送られたメールが
MLサーバに登録されたメンバー全員に配信されるもので、大きな掲示板を見るのと同じ効果を持っています。メーリングリストはいろんな人が参加できるので、父親や子育ての専門家、独身の男性、仕事を持っている母親が会社からメールを出したり、外国在住の日本人の母親、これから海外生活を送る予定のある母親、さらにはこれから出産をするという母親なども参加しています。
<ネット上から実際の生活へ
―― コミュニケーションの広がり>
MLを通じて、子育ての相談や情報交換が盛んに行われているわけですが、そうするうちに近所に住んでいる人同士で、実際に会うようになってきます。これをオフ会(オフラインミーティング)といいます。オフ会が初めて開かれたのは静岡でした。次に横浜でも開かれました。このオフ会の様子はMLや会員専用のHPで紹介されて、今は関西や九州でもオフ会の計画が進んでいます。
私はこの両方のオフ会に参加したのですが、二つに共通していることがありました。それはまったくの初対面なのに、すぐに打ち解けて話が盛り上がるということでした。
実際に会うまで、顔は分からないけれどメールでいろいろ相談して、心を開いているので自然にこのようになるのだと思います。オフ会を通じて面識が出来て電話をしたり、家が近くの人は近所で遊ぶ友達にもなるようです。ネット上だけでなくこのように様々な形でコミュニケーションが行われています。
<より良い子育て環境をつくるために>
インターネットを使うことは、単なる出会うための手段(きっかけ)にしかすぎません。最終的な目的は、困ったときに助け合える近所の友達を作ること、地域でのコミュニケーションを活発にすることです。ですから、私の行っているインターネットを使った子育て支援も地域に根づいたネットワークとなることを願っています。
今の母親達は横のつながりが希薄であり、地域とのつながりもないのです。これは本当に困ったときに近所に相談できる人がいない、助けてくれる人がいないということになります。そして社会とのつながりがない母親は、外に出ず閉じこもりきりになり、ストレスを溜めていく一方ですし、ストレスを抱えた母親と接する子どもにも、良い影響はありません。
子どもがのびのびと育つために、行政ができることは、今子育てをしている人が気軽に出掛けられてコミュニケーションをはかることのできる場所を作ることです。そして地域でもだれもが子どもを育てている人に暖かい目を向ける、そういう雰囲気をつくることが重要ではないでしょうか。
子育てに関する問題は行政、地域、家庭のそれぞれが協力して対応していくことが大切ですし、私たち自身が子どもは地域で育てる、個々の子どもではなく地域の子どもという意識を持って、子育ての環境をつくることが必要になっていると思います。
鈴木 久美子 (すずき くみこ) 1970.10.25生 O型
さそり座
mail :
vi-tama@din.or.jp
<みんなで子育てネットワークHP>
http://www.geocities.co.jp/HeartLand/1117/
子育て・子持ちエンパワーメントとは何ぞやを考え中
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