講師 都立大学理学部地理学教室 教授 杉浦芳夫
はじめに
多摩ニュータウンの商業地域は、新住宅地開発事業地域と土地区画整理事業区域に大別される。新住宅地開発事業地域では、住区サービス、地区センター、中央センター3階層の階層的商業地区配置がされた。住区サービスは、「1住区1センターで1業種1店舗」と計画的に割り付けられた。これが時代の変化ともに、お客の流れが変わり、大きな課題になってきた。一方、土地区画整理事業区域では、ロードサイドにニーズに合わせて自然発生的に、各種の店舗ができて来た。
商業地区について
昭和57(1982)年と平成3(1991)年の「商業統計調査報告書」(町丁別集計結果)の分析が報告された。1階層(多摩センター):1商業地区で全体に対し売り上げ78%、売場面積88%、2階層(永山、堀ノ内など):5商業地区で売り上げ18%、売場面積9%、3階層(住区サービス):19商業地区で売り上げ5%、売場面積3%で、いかにお客が多摩センターに集中し、住区サービスの地位が低いかが分かる。
購買行動について
平成5(1993)年10〜11月に実施した、多摩ニュータウン内15中学校中7校の2年次生徒の世帯へのアンケート調査の分析を行った。野菜・果物は住区サービス35%、多摩センター15%、家庭・台所用品は住区サービス25%、多摩センター20%と成って居るが、高級衣服は多摩センター30%、新宿29%と成っている。
住区サービスとの関連で見た購買行動の変化
住区サービスの魅力がない、駐車場がない、大型店の影響が経営上の問題になっている。また自家車の普及と女性の就労が、休日の纏め買い、帰宅時購入が行われる。住民の要望は1点集中型44%、やや分散型34%で、住区サービスは期待されていない。
他のニュータウンとの比較
大阪千里ニュータウン、広島高陽ニュータウンとも階層的商業地区配置をしており、近隣センターの利用が低い。千里ニュータウンのデータでは高所得者ほど中央センターや都心での購買が高い。
おわりに
Christaller(1933)の中心地理論による集落の階層的配置が長く使われてきたが、これからはツリー(tree)型都市とセミラチス(semi-lattice)型都市構成が適している。
コメンテータ 中央大学総合政策学部 教授 細野助博
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