第1回ミニフォーラム


 第1回ミニフォーラムは、平成14年9月8日(日)10:00〜12:00、下記プログラムで実施しまし。企画から実施までの期間が短く、皆さんに開催のお知らせを充分にすることができませんでした。にもかかわらず、当日は26人(非会員8人を含む)の方々にご参加いただき、活発な意見交換がなされました。

 多摩ニュータウン学会では、ニュータウンの学校と教育、子供たちを育むまち作りを考える取り組みの一貫として、下記のようなフォーラムを企画しました。多摩ニュータウンにおける、手作りの学びの機会をつくる切っ掛けにできればと願っています。

 この春から、小中学校では、学校五日制のもとで、新しい学習指導要領がスタートしました。授業時間数や学習内容の削減に対して、学力低下や学力偏重が指摘されています。

 基礎・基本の学習を大切にすると共に、自分で考え、自分で解決する力を身につけることの大切さが強調されています。

 また、学校そのものの在り方が問われるようになり、学校と地域との連携の大切さが指摘されています。いま、まさに子供たちを支える豊かな地域社会(地域力)の在り方が問われています。

  テーマ:「学校と地域の連携・共生」

  日時:9/8 (日曜日 10:00 - 12:00)

  場所:たまバンサンかん 2 階会議室

  内容:1.「学校と地域の新しい連携をもとめて」 尾池佳子さん(柏木小学校)
      2.「学校を地域に開く〜松木コミュニティスクールの取り組み〜」
                              炭谷晃男さん(大妻女子大学)

研究・企画担当理事 生田茂


だれでも気軽に参加できる学会活動を目指して
〜ミニフォーラム企画の背景とねらい〜

                                   研究・企画担当理事 生田茂

 「もっと住みやすい街づくりを市民の視点で実現しよう」という趣旨で本学会が発足し、5年が経ちました。さまざまな素晴らしい活動が生まれましたが、一方で、「日常的に活動に参加できる機会が少ない」「参加するのに躊躇している」という声をいただくようになりました。

 学会理事会ではこうした声を真摯に受け止めて、もう一度原点に立ち返って、地域を見つめる活動からやり直してみようと考えました。今年の統一テーマ「市民連携による“新たな公”の形成」に基づき、特に学校完全週5日制や新指導要領の開始で市民の関心が高い「教育(共育)」をテーマに、子どもたちを取り巻く育ちの環境について実践事例を紹介しながら意見交換できる、私たち自身にとっての“学びの場づくり”に取り組むことにしました。それが、9月から始まったミニフォーラムです。

 教育の課題は学校だけの問題ではなく、地域社会や家庭の反映でもあります。今まさに、学校と家庭・地域との連携の内実が問われています。豊かに学び、遊び、生活する場としての、地域社会(街づくり)に向けて、このミニフォーラムシリーズが、多摩ニュータウンに手作りの学びの機会をつくるきっかけになればと願っています。また、ミニフォーラムの取り組みを通して、ニュータウンの街づくりを再考する運動へと発展することを願っています。皆さんの積極的な参加をお願いします。


     ★第一回ミニフォーラムのご報告

学校と地域の新しい連携をもとめて
八王子市立柏木小学校教諭 尾池佳子さん

1.柏木小学校の沿革

 八王子市立柏木小学校は、2002年開校20周年を迎えます。多摩ニュータウンの西側に位置しており、近隣には多くの大学があります。同小学校は1998年にインターネットに接続され、パソコンやインターネットを活用した実践に様々とりくんできました。

2.柏木小のとりくみについて

@地域の団地の高齢者クラブ「若竹会」と小学生たちの交流、
A地域MLなどインターネットを活用した学びあい、
B地域の大学のひとつである多摩美術大学の先生と学生による授業支援、
C避難訓練で三宅島の避難者の話を聞く、Dクラブ・ボランティア・ティーチャーの取り組みなど、主なものを紹介しました。

 Bは、大学生側にも卒論の研究や就職活動の役に立ったなど、お互いメリットになりました。A〜Dは、インターネットを活用し、またはそれをきっかけにした取り組みです。

3.学区という地域との連携から学区の垣根を越えた地域との連携へ

 柏木小で様々な取り組みが生まれたのは、学校と地域の相互理解、信頼関係が熟成されてきていたこと、親や地域が、学校との連携の取り組みを待っている素地があったこと、歴代管理職の民主的な学校経営が、開かれた学校を育んだこと、新しいことに挑戦することを恐れない職員の雰囲気があったことなどがありますが、より大きな要因は、早くからインターネットに接続され、その有用性に気づき、活用してきたことでしょう。これにより地域の枠を拡げ、繋がりを深めることが可能になり、学校の学びを豊かにしました。

東京都八王子市立柏木小学校 kasiwagi@ttv.ne.jp
http://www1.ttv.ne.jp/~kasiwagi/

松木コミュニティスクール
大妻女子大学社会情報学部教授 炭谷晃男さん

1.松木寺子屋とは:まちが学校、地域の人が生徒で先生

 「松木コミュニティスクール:寺子屋」(石井敏男会長)の取り組みは,松木地区の学校を活動の拠点として、学校・家庭・地域が協力しあい、大人から子どもまで一体となって学びあう、自主的な活動を企画・運営・組織する「松木コミュニティスクール」という「学びの共同体」の創造をめざすものです。この活動は学校を地域住民の生涯学習の場とし、コミュニティ及びカルチャーのセンターとして活用する学校開放の試みでもあります。

2.活動のきっかけ:2つの動輪

 活動のきっかけは松木地区にある2つの活動実績でした。

@松木インターネットボランティの会(V-Net)の小中学校と連携したパソコンボランティア活動。(http://matsugi-vnet.charcoal-valley.net/)、A松木地区青少対活動です。このように新旧住民の活動を結びつけるところに寺子屋活動の隠された意味もあります。さらに、B学校五日制に関する調査(2001年12月)を実施しました。C八王子市のサタデイスクール事業の呼びかけは寺子屋をはじめる強い追い風となりました。

3.地域の人的、物的資源のネットワーク:地域のクラブ活動

 地域にある教育機関や地域資源のネットワークが必要です。生活基盤であるコミュニティにしっかり立脚しつつも「開かれたコミュニティ」を目指す必要があります。寺子屋の活動は松木中学校区の2小学校が参加し、8月のサマースクールでは、近隣の下柚木小学校も加わり、中学校に宿泊するキャンプを実施しました。地域の保育園・児童館・学童・自治会等とも連携し、9月からは地域の商店も参加した教室を実施しています。課題は山積していますが、地域の誰もがともに学びあえる「地域のクラブ活動」を目指しています。

松木コミュニティスクール:寺子屋 事務局長 炭谷晃男
http://mcs.charcoal-valley.net/

▼尾池さんへの質問・感想については、柏木小学校が管理職はじめ教職員一同の力によって学区を越えた積極的な連携を展開していることに大きな驚きと評価がありました。一方、週五日制の導入などにより、現場教員に時間の余裕がないなか、地域の方のボランティア・ティーチャーが教員側にとっても大変支えとなっていることが尾池さんからコメントされました。

▼炭谷さんの活動事例については、試みは大変すばらしいが、「学校」という枠組みから完全には抜け出せていないので、学校から切り離して地域が完全に受け持ち、クラブ的な存在にすべきではないか、と指摘がありました。これについては、八王子市側ニュータウンにおけるコミュニティセンター不足など現在の施設や地域的状況をあげたうえで、学校教育にあらゆる教育を押しつけるのではなく地域で育てていくという点では同じであるとコメントされました。

▼その他の意見としては、このような事例報告を通して「経験」や「モノに触る」重要性を改めて認識した、などがありました。学校といういわば地域の核となる場所での活動は非常に重要である一方、学校選択制の導入によって「地域の学校」という意識構図がどのように変容してしまうのか、また、地域から学校に対する取り組みについて校長・教頭と現場教員とでは意識の差が確かに存在し、今後も議論となるのではないかと司会者から述べられました。