2002年度総会およびシンポジウムのご報告
5月25日(土)ベネッセコーポレーションにて開催
多摩ニュータウン学会筆頭理事 田一夫
2002年度の統一研究テーマ
当学会では、毎年度 年間の統一研究テーマを定めて調査・研究を推進しています。
2002年度の研究テーマは、「市民連携による“新たな公”の形成〜ニュータウンの新しい魅力作りのために〜」です。 多摩ニュータウンの街づくりは、これまで、都や公団の「官」依存で行われてきました。しかし、東京都の撤退など最近の状況変化に対応し、ニュータウンの再生を図っていくためには、新たな概念の創造が必要です。それが、今年の統一テーマ「新たな公」の形成です。 ここで提案する「新しい公」とは、「官」と「民」が協働する空間です。「新しい公」は、今までの「公」とは何が違い何が同じか、「新しい公」形成に「市民」「民」「官」がどのような協働を形成していったらよいか、新しい住民自治のあり方は何か、この一年その答えを模索し、そのプロセスの先にニュータウンの新しい魅力を発見したいと考えておりますので、会員の皆様の積極的な参加をお待ちしています。 |
2002年度 総会のご報告
2002年度総会が去る5月25日(土)に行われました。12時に開会、まず、2001年度事業報告、収支決算報告、監査報告について、担当理事、監事から報告があり、それぞれ満場一致で承認されました。 引き続き、2002年度事業計画案、収支予算案について、担当理事から提案され、活発な質疑応答の末、満場一致で原案通り議決されました。 最後に、役員の選任について提案され、かねてより諸般の事情から辞意を表明されていた、斎藤裕美さん、萩原利明さん、星旦二さんの三理事の退任が承認され、新たに生田茂さん、加藤由起子さん、望月照彦さんの三人の理事就任が承認されました。また、昨年の総会で要望のあった監事の増員について、候補者を選考した結果、会員の作道好男さんを監事に選任する件について、満場一致で承認されました。 退任された三人の理事のこれまでのご尽力に対し厚く御礼申し上げますとともに新たに就任された理事、監事の皆様にはそれぞれの分野でのご活躍を期待しております。 シンポジウムについては、市民連携による新しい「公」の形成を教育(共育)の場から検証してみました。詳細は2ページ以下をご参照ください。 |
一般公開シンポジュウム
教育から共育へ 〜市民連携による新しい「公」の形成〜 これまでの「教育」は「官」が用意してきましたが、 ・開催日時:5月25日(土)13:00〜16:30 ・開催場所:ベネッセコーポレーション 13階大ホール ・基調講演:義本博司氏(文部科学省 大臣官房行政改革推進室 室長) ・パネラー:永関和雄氏(八王子市教育委員会 指導室長) 岸 裕司氏(秋津コミュニティ 顧問) 島内行夫氏(ベネッセ教育研究所 主席研究員) 荒井正巳氏(由木児童館 指導員) ・コーディネーター:炭谷晃男氏(大妻女子大学 教授) |
基調講演
「地域と教育との連携の現状と新たな展望」 文部科学省 大臣官房行政改革推進室 室長 義本博司氏 |
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学校教育が「生きる力」の育成を目指して教育改革を推進。学校週5日制の実施、ボランティア活動の推進、新学習指導要領に総合学習(教科学習をベースに調べ学習や体験学習を融合させた内容)を導入した。これにより、地域の人材・資源の活用や協力が不可欠になり、同時に「開かれた学校」として学校には情報公開が求められるようになった。一方、地域社会では、人間関係・連帯感の希薄化への懸念や地域における自己実現の追求から、市民が自分の特技を生かして地域活動を始めるようになった。その場合、学校を中心とする地域の教育・福祉活動は市民にとって参加しやすい機会・場になっている。 少子化や国立大の法人化などで経営改革を求められる大学では、生き残りのためには地域貢献が不可欠になっている。また財政難にある地方自治体においても、地域の課題解決には大学の知的資源を大いに活用したいところである。 2.連携の現状と新たな展望 初等中等教育(小中高校)においては、学校の空き教室を使ったNPOの活動や、一定期間の職場体験・ボランティア活動などが始まっている。コミュニティ・スクールの一環として校長職を一般公募したり、学校運営に地域社会が参画・評価する動きも始まっている。 高等教育(大学)では、学生を地元小中学校にボランティア派遣して教育補助を担ったり、市民講座と大学講義の連携で生涯学習への協力を行うほか、地元自治体や企業・NPOがインターンシップの受け入れを行っている。また、大学・企業・行政・NPOがコンソーシアムを組んで地域の多様な課題解決に乗り出している「学術・文化・産業ネットワーク多摩」のような広域な動きも注目されている。 (個々の事例詳細は、誌面の関係上割愛させていただきました:ニューズレター編集担当) 3.今後の課題 教育機関と地域との連携には、両者を結ぶコーディネーターの存在および連携を活発に促すための誘導施策(特に大学と自治体)が不可欠である。前者は、人材養成プログラムを開発して計画的に研修(特に、聖域・聖職とみなされてき学校教員に対して)が求められる。後者については、モデル事業の推進とともに税制措置や規制緩和などにも取り組むべきと考えている。 |
パネルディスカッション
●八王子市教育委員会 指導室長 永関和雄氏 市内105小中学校の2,100人の教員には、普通の市民感覚を持った教職者であって欲しいと、常々言っている。@学校インターンシップとして、小中学校に大学生を派遣、A教員免許を持ちながら採用ワクがなく待機中の人材に研修を実施、B市内21大学と連携して、教師に夏期講習を実施、C不登校生徒を対象に午前中は教科学習、午後は体験学習のプログラムを提供し、自分探しを支援するなど、「共育」の試みを展開中。 ●習志野市秋津コミュニティ 顧問 岸裕司氏(ビデオ上映あり) 地域市民で生涯学習の推進活動を秋津小学校で展開中。@学社(学校教育と社会教育)融合教育として、地域のお父さんたちが小学校の飼育小屋を建設、子どもと大人が自然に交流する場になっている。A学校施設の一部をコミュニティ活動の拠点に。それが学校のクラブ活動と融合することで、学校・子ども・地域がそれぞれの資源を持ち寄ってプラスαのメリットを享受。楽しさと知恵の出し方で、誰も負担増することなく「共育」が実現できる。また、これらの活動を通して、PTA役員や町内会会長のようなマネジメント感覚を持つ人材を育成する機能も結果的に持つようになった。 ●八王子市由木児童館 指導員 荒井正巳氏 児童館は幼児から中学生を対象とした施設。児童館で自己完結する体質から、地域とのネットワークで役割を果たして行こうと脱皮中。助産婦・保育士などと連携した「ゆうゆうクラブ」や出張児童館で乳児も含む子育てや学区の学童保育を支援。行政自身も組織内を横の連携で融合させ、受身姿勢ではなく、地域にとって頼りになる存在にしていきたい。 ●ベネッセ教育研究所 主席研究員 島内行夫氏(ビデオ上映あり) 多摩市内の廃校施設を使って子どもたちの遊びと学びの場「永山ちーきち」を毎週土曜日に展開中。スタッフは大学生ボランティア。現状は運営資金を全面負担。これまで学校が担ってきた子どもたちの学びと遊びの場を、今後、家庭や地域など「民」が代わって創っていくには、施設活用など含めてまだ課題が残されている。 ●コーディネーター(大妻女子大学 教授 炭谷晃男)まとめ 「共育」の実現には、学校の地域化と地域の学校化の両面が必要であると同時に、地域のコミュニティ再生が教育のベースとして求められる。「私たちの街・私たちの学校」を創るという意識で、地域の学校・市民・企業などが連携する時代。今回のテーマは話し合って終わりとせず、多摩ニュータウン学会として今後も実践を通して追求していきたい。 ★★★ 会場との質疑応答および提言 ★★★ 〇地域が教育を担うには、関わる人自身も楽しめる形で自発性を尊重したい。が、継続的に 〇学校教育に支障のない範囲で施設開放するのではなく、学校教育の充実のために施設開 〇学生だけでなく、有能で元気な高齢者パワーをもっと活用すべき。 〇これだけ充実したシンポジウムになぜもっと多くの人が参加しないのか。子どもの教育云々 (文責:ニューズレター編集担当:植月) |
★理事会新体制のご紹介★
先般の学会総会で、新たに3人の理事選任をご承認いただきました。今年度は以下の役割体制で参りますので、よろしくお願い申し上げます。(カッコ内は主な担当業務です) ●筆頭理事:田一夫(理事会代表として、理事会召集・進行および各理事の業務調整等) |