「シニアーの視点からみた多摩ニュータウン」 山下 亨(シルバーユニオン)

 私は1928年生まれですので、実年齢では高齢者の域に入ります。今日は高齢者の視点から話を、ということでしたが私自身は日常生活において、高齢者という意識はないので、高齢者の立場よりも地域活動をしている者としての視点でお話したいと思います。

<多摩NTでの地域活動>
 私は10年ほど前に多摩NTに移りました。定年後は嘱託で働く道もありましたが、自分の趣味を優先することにしました。現在は地域の趣味の同好会や、ボランティア活動に参加し、充実した毎日を過ごしています。

 同好会、ボランティアの活動の場である公民館、コミュニティーセンター、福祉センター、図書館、スポーツ施設は、ほぼ整備されていて健康な高齢者には使いやすいものとなっています。

 しかし、問題点もあります。それは陶芸同好会などは人気が高くなかなか欠員が出ないので、参加するのに非常に高い倍率をくぐりぬけなければなりません。入会するのに4、5年待つこともあるようです。

 実際に地域で活動を始めてみて、最も感じたことは、男性の参加が非常に少ないことでした。ダンス、コーラス、油絵、テニス、学習教室、英会話、どれをとっても女性が圧倒的多数を占めます。男性優位は囲碁同好会、男性のための料理教室ぐらいです。私自身、仲間に男性が欲しかったので、機会があるたびに中高年男性に声をかけてきました。自称、地域活動推進員の所以であります。

 最近は、男性一人ひとりに声をかける一本釣りより、一本釣りで仲間になった男性とともに効率的な仲間作りの方法を行って、かなりの成果をあげています。

その例をいくつか申し上げますと、「中高年のための安全で楽しい山登り」という市民講座を開いた後、アフターグループで「多摩一、二山歩会」をつくり、現在70名ほどの会員がおりまして、一緒に山登りを楽しんでいます。

 また、「自由な葬儀とお墓」という企画にも多くの参加者があり、「多摩葬研」として活動を続けています。三菱総研や野村総研と間違わないように注意を呼びかけています。

他にも市議会の活性化と市民の市政への参加意識を高めることを目的とした「多摩市議会ウォッチングの会」を企画しています。これは男性ばかりになってしまったので逆に女性の参加を呼びかけているところです。それから、「日本語座」という劇団を作りました。日本語教室の外国人や先生、大学演劇部の学生の力を借りて、毎年行われている多摩市演劇フェスティバルへの旗揚げ公演を考えています。

<多摩NTの高齢化>
 多摩市の高齢者の割合は現在7%となっています。今後、一層、高齢化が進むことでしょう。多摩市も高齢化の課題を幾つか抱えることになります。全部についてお話しするのは時間がありませんので、”高齢者の基本的人権が守られているか”について触れたいと思います。

 最近、「オール川柳」という月刊誌で次のような川柳が特選に選ばれました。「老人は 死んでください 国のため」。この句は高齢者の大きな衝撃を与えました。

50年前の戦争で、私たちは、「国のために若者は死んでくれ」と言われました。その戦争をやっとの思いで生き延びて、その後30年以上、企業に忠誠を誓って働きました。かろうじて過労死を免れたと思った矢先、老人は死んでくれ、であります。「老人栄えて国滅ぶ」などという本も出版されました。「もっともだ」と、豆腐のかどに頭をぶつけて死んでやろうかと思いましたけれども、高齢者に対する批判的、否定的な見方は高齢者自身が考えてみなければならない点が多々あります。

<高齢化への提言>
 高齢者、特に男性は地域の一員として積極的に関って、出来ればどれだけ社会に貢献できるかという意識と気概を持って活動して欲しいと思っています。女性達は放っておいても大丈夫です。

 「生きている間はピンピン、死ぬときはコロリ。」これをP.(ピン)P.(ピン)K.(コロリ)といって,P.P.K.をモットーにトリム体操をしているグループがあります。P.P.K.は高齢者にとっての理想でしょう。

 高齢化と少子化は同時進行です。若者が街から去っていく図式は簡単に変えられません。残された高齢者は街の活性化に取り組んでいく必要があるでしょう。

老後の人生は環境もさることながら、健康や知的財産、人的ネットワークが大切だと思っています。中高年男性は名誉や財を増やすことから早めに脱却して、地域と関わる人生設計を考えるべきでしょう。

 今、ごみ処理の問題が社会で取り沙汰されています。中高年男性が地域の粗大ごみにならないことを願って、私の話を終わります。

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